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4月3日、フランドル楽派の大家にしてヴェネツィア楽派の端緒、ヴィラールトの興味深さ... その興味深さを強調する受難曲からの復活祭モテット!

トレ・トム・デニス(テノール)が率いる、ウィーン拠点の古楽ヴォーカル・アンサンブル、ディオニュソス・ナウ!が、ヴィラールトを歌うシリーズ、完結編、ヨハネ受難曲など... "ADRIANO 4"。
Evil Penguin/EPRC0054

生粋のフランドル人にして、フランドル楽派の大家、アドリアン・ヴィラールト(ca.1490-1562)... なわけだけれど、この人を特徴付けるのが、フランドル楽派が打ち立てたルネサンス・ポリフォニーから次なる一歩を踏み出したこと... 1527年、ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂の楽長に就任したヴィラールトは、この古い教会の癖のある構造、祭壇の両脇に存在する聖歌隊席を活かし、聖歌隊を2つに分けることで、調和の芸術、ルネサンス・ポリフォニーに一石を投じる。それが、分割合唱=コーリ・スペッツァーティ!聖歌隊を異なる2か所に配置したことで、精緻なポリフォニーを織り成すことは難しくなるも、それを逆手に取り、声部を整理、より明快な音楽を紡ぎ出す。さらには、2つの聖歌隊の間にコントラストを生み、バロックの呼び水にも... という、ヴェネツィア楽派の端緒となったヴィラールトによる、ヨハネ受難曲(ca.1545)と、復活祭のためのモテットが歌われる。

まずは、ヨハネ受難曲... 聖書の朗読に端を発する受難曲ということで、その音楽、朗読を思わせる淡々とした佇まいが印象的。で、朗読を意識させられるホモフォニックな音楽が、受難の物語を丁寧に語り紡ぎ、その実直さに心打たれるのです。いや、ルネサンス・ポリフォニーでは味わえない実直さ!次なる時代を意識させられるヴィラールトの音楽だなと... の後で歌われる、復活祭のためのモテットは、一転、ふわーっと花開くようにポリフォニーが織り成され、これぞフランドル楽派!いや、この、受難(ヴェネツィア流?ホモフォニック... )から、復活(フランドル楽派の十八番、ポリフォニー!)へという展開にドラマが生まれ、また惹き込まれる!

という、ヴィラールトの教会音楽を聴かせてくれた、デニス+ディオニュソス・ナウ!男声のみによる重心の低いハーモニーから丁寧に綴られてゆくキリストの受難、けして派手ではないものの、何とも言えぬ詩情がこぼれ出し、気が付けば、静かな感動に包まれ... モテットでは、ルネサンス的美麗さ、存分に引き出し、ルネサンスとして、フランドル楽派としての充足感をたっぷりと味合わせてくれる。いや、デニス+ディオニュソス・ナウ!によるヴィラールト(というチョイスからして、なかなかに奇特... )のシリーズ、4作目(完結編)だけに、積み上げてきたもの、伊達じゃない!確かな聴き応えに感服、惹き込まれた。

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