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11月29日、"ロンドンのバッハ"と少年モーツァルトの交歓をつい妄想してしまう、2人の連弾作品...

アレクサンドラ・ネポムニャシチャヤとリチャード・エガーの子弟コンビ、デュオ・プレイエル、ピリオドのピアノの演奏で、J.C.バッハとモーツァルトの連弾作品集、"Mozart's Real Musical Father"。

1763年、ザルツブルクの神童、モーツァルト少年は、一家で、長い長いヨーロッパ・ツアーへと出発する。そうして辿り着いた、18世紀、随一の音楽マーケット、ロンドン... 1764年、8歳のモーツァルト(1756-91)は、ロンドンの音楽シーンの寵児となっていた"ロンドンのバッハ"こと、ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-82)と出会う。そこから始まる、モーツァルト一家と"ロンドンのバッハ"の親交... モーツァルト少年は、ヨハン・クリスティアンの膝に抱かれながら、一緒にチェンバロを弾いたのだとか...

そんな記憶を紐解く連弾の数々... ヨハン・クリスティアンのソナタ、3曲(Op.15-6、Op.18-5、Op.18-6)に、モーツァルトのソナタ、2曲(K.381、K.358)と、変奏曲(K.501)、合わせて6曲。1764年の2人が弾いた作品でこそないものの、2人の交流の微笑ましさ、何気に伝わる音楽で、"ロンドンのバッハ"からモーツァルトへと受け継がれるもの、見出せる、興味深さ!

J.C.バッハとモーツァルトをつなげれば、18世紀の音楽のパノラマを俯瞰できそうな気がしてくる。大バッハの末息子で、次兄、C.P.E.バッハに育てられ、家出してイタリアに向かい、ボローニャの権威、マルティーニ神父に師事、一早く古典主義が盛り上がりを見せていたミラノで研鑽を積み、ナポリ楽派の拠点、ナポリに飛び込んでオペラで成功したJ.C.バッハ... バロックとポスト・バロックの全てを吸収した存在と言えるのかもしれない。それを受け継ぎ、古典主義の花となったモーツァルト... いや、感慨深いです。で、連弾のソナタで両者を並べれば、余計にそう感じさせるのかも...

という、"Mozart's Real Musical Father"を聴かせてくれた、デュオ・プレイエル。1795年頃製作のアントン・ヴァルターのピアノ(レプリカ)の、味のあるサウンドで、師弟ならではの息の合った演奏を繰り広げる。で、何か、こう、ちょいチルでいて、18世紀の楽しさ、ありのままに引き出し、スパークル!いや、この絶妙さが、ヨハン・クリスティアンとモーツァルト少年の交歓そのものに思えて... そんな音楽に触れていると、ヨハン・クリスティアンの膝に抱かれた、ちっちゃなモーツァルトをつい妄想してしまう... いや、連弾って、微笑ましい。


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