見出し画像

10月20日、バロックからロココへ... うつろう中にこそ魅惑を生む、フランクール兄弟の音楽に聴き入る...

仏ピリオド界を担う次世代、テオティム・ラングロワ・ド・スワルテ(ヴァイオリン)と、ジュスタン・テイラー(クラヴサン)が、フランクール兄弟とその周辺を取り上げる、"LES FRÈRES FRANCŒUR"。

ヴェルサイユの宮廷音楽の一端を担ったアンサンブル、"王の24のヴァイオリン"の一員の父、ジョゼフ(1662-1741)の下に生まれた、ルイ(1692-1745)とフランソワ(1698-1787)のフランクール兄弟に、ルイの子でフランソワによって育てられたルイ・ジョゼフ(1738-1804)... 18世紀、フランスで活躍したヴァイオリニスト一家による、ヴァイオリンとクラヴサンのための作品を取り上げる、"LES FRÈRES FRANCŒUR(フランクール兄弟)"。

で、このアルバムの核となるのが、兄ルイのソナタに、弟フランソワのソナタ、2曲、そして、コレッリの弟子で、イタリア流をフランスに持ち込んだヴァイオリニスト、アネ(1676-1755)のソナタ。そこに、弟フランソワが、盟友、フランソワ・ルベル(1701-75)と共作したオペラ(2人のフランソワは、長らく、共同で、パリ、オペラ座の音楽監督を務め、多くのオペラを共作している... ちなみに、もうひとりのフランソワは、バレエ『四大元素』で知られるジャン・フェリ・ルベルの息子... )からのエールや舞曲をヴァイオリン用にアレンジし、挿み、より花やかに多彩な音楽で彩る。

いや、このオペラからのアレンジが効いている!エールをヴァイオリンが歌うわけです。アリアではなく、エール!この、フランス流の"歌う"感覚が、とにかく魅惑的!劇性と詩情が絶妙に融合され、ヴァイオリンの優雅さ、思いの外、引き立つ!だから、イタリア仕込みのアネのソナタの重々しさ(バロック)と並べると、フランスの一歩進んだ優美さ(ロココ)をより感じられるようで、興味深い... とはいえアネの重々しさも魅力!

一方で、兄ルイのソナタに、弟フランソワのOp.1からの10番のソナタは、4楽章構成のイタリア式なのがおもしろい。てか、バロック(前時代)とロココ(新時代)、フランス式(伝統)とイタリア式(革新)の、一筋縄には行かないもどかしさ!18世紀のうつろいの中を生きたフランクール兄弟なのだなと... しかし、そのうつろいのもどかしさをも情感に昇華して生まれる魅惑!"LES FRÈRES FRANCŒUR"の醍醐味... 惹き込まれます。

という、18世紀、フランスのヴァイオリンのパノラマを聴かせてくれたラングロワ・ド・スワルテ... いや、すばらし過ぎるのです!ピリオド・アプローチの無駄の無いサウンドから、滔々と歌い上げて、溢れ出す、フランス!スーっとメロディーを奏でただけで、ドラマが、ポエジーが溢れ出し、ちょっと夢見るようで、切なげでもあって... そこに、テイラーのクラヴサンがしっとりと寄り添い... これが、得も言えず澄んだサウンドで、音楽に輝きを纏わせる... 聴き入るばかり...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?