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12月3日、シューベルトのソナタを、シューベルトが所有していたピアノで弾いて生まれる魔法!

スイスを拠点にするピアニスト、矢野泰世による、ピリオドのピアノで弾くシューベルトのソナタのシリーズ、第2弾、19番と7番... シューベルトが所有していたコンラート・グラーフ(レプリカ)で...
Ibs CLASSICAL/IBS42022

18番と16番のソナタが取り上げられた第1弾に続いての第2弾は、シューベルト、最期の年、1828年に作曲された最後の3つのソナタのひとつ目、19番と、シューベルトがそろそろ学生時代を終え、作曲家として歩み出そうという頃、1817年に作曲された7番。短い音楽人生、しっかりと歩んできての到達点と、これからへのワクワクが感じられる組み合わせ...

で、このアルバムを特徴付けるのが、コンラート・グラーフ(レプリカ)のピアノ!ピリオドのピアノならではの味わい深いトーン、ノスタルジックな風合い、魅惑的なのだけれど、何より、モダンのピアノには無いペダル(全部で6つも!)がもたらす効果たるや!特に、リュート・ペダルの異世界感、本当にピアノ?とすら思わせる、ただならなさ、凄いのです。

しかし、何と言っても、"シューベルトが所有していた"コンラート・グラーフで弾いての魔法!何だろう?楽器と音楽が一体化する感覚?そこにあるのは、スコアを具現化するメディアとしてのピアノではなく、シューベルトそのもののようにすら感じられ... まるで、音楽が血肉を得て語り出すかのよう... 単にかつてを再現するだけでない、迫るものある!

そんなシューベルトを聴かせてくれた、矢野... 一癖あるピリオドのピアノを完全に手中に収め切って、最大限の表現を引き出し切る技術、ひとつ頭抜けている!楽器を選ばないのも作品の真価だけれど、楽器を選んで生まれる、作曲家の、その当時のリアルが持つ迫力、知らしめる彼女の演奏は、ただならない... 一方で、ああ、このピアノを弾いて生みだされた音楽なんだな... という感慨で、聴く者を包み、そうして、作曲家への慈しみ、やさしさで充たされる感覚、沁みます。

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