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食べられる写真

※※グロ要素あるので、苦手な人はUターンした方が良いです※※「世にも奇妙な物語」風味の内容を書きたくて書いてみた習作……だが、なんだこれ。

   人 物
満田邦久(17)ひきこもり
邦久の母

○邦久の部屋(夜)
パソコンの画面の明かりだけが灯る。
室内には食べ散らかした菓子の袋、カップラーメンの容器が落ちている。
満田邦久(17)がフライドチキンを食べながら、パソコンを操作している。
画面には掲示板サイトが映っている。
邦久がマウスホイールをまわす。
画面に邦久が食べているチキンの評判が表示される。
邦久、手に持っているチキンを眺め、
邦久「んだよ、期待外れじゃねぇか」
邦久、チキンを後ろに放り投げる。
チキンが床に落ちると、3匹の飼い猫たちがチキンに群がり、食べ始める。
邦久、服で手を拭いて画面に集中する。
トントン、とドアをノックする音。
邦久は無視してネットを続ける。
邦久の母の声「邦久、ごはん、置いとくわね。……あと、邦久宛の荷物も置いておくから。……邦久、聞いてる?」
邦久、舌打ちをする。
ドアのほうを向き、怒鳴るように
邦久「うっせぇ!聞こえてんだよババァ!」
邦久の母の声「そ、そうよね。ごめんね」
母親の足音が遠のく。
邦久、立ち上がりドアのほうへ向かう。
ドアが開くと、廊下に夕食と箱が置かれている。
邦久、箱だけを持ってドアを閉める。
パソコンのほうへ歩きながら、
邦久「なんかやたら重いな……」
パソコンの前に座り箱を乱暴に開ける。
箱の中身は大量のスナック菓子。
邦久、嬉しそうに菓子を取り出し、眺め、菓子を横に置く、再び箱のほうを見て、何かに気づいた顔をする。
箱の底に「親展」と書かれた封筒とポラロイドカメラが入っている。
邦久、封筒を取り、開封して読む。
邦久「日ごろから弊社通信販売をご愛顧頂きありがとうございます。このたび弊社で開発中の新製品『ショクット』のモニターに、あなた様が選ばれましたのでお知らせ致します……」
邦久、カメラを取り出し、眺める。
再び手紙を読み始める。
邦久「ショクットは食べられる写真を撮れる近未来型カメラです。本体1台と取扱い説明書を同梱いたしましたので、ぜひご活用の上ご感想をお聞かせください。……ハア?」

○同部屋の前の廊下(夜)
夕食が置かれている。
邦久が部屋から出てきて、夕食の前にあぐらをかいて座る。
カメラの説明書を少し読んでから、説明書を横に置き、カメラをかまえる。
ファインダーに、夕食と、邦久の足が映る。
邦久、シャッターを押すと、カメラから写真が出てくる。邦久、写真を引っ張り出し、カメラを置く。
写真にゆっくりと絵が浮き出てくる。
邦久、写真を眺め、写真の夕食が写っているあたりを噛み千切り、咀嚼し、目を見開く。
邦久「ババァの料理の味だ……」

○邦久の部屋(夜)
邦久、食べかけの写真を放り、パソコンに飛びつく。
画面に、ホテルレストランの豪華な料理の画像を映す。
邦久、それをカメラで撮る。
出てきた写真を噛み千切り、咀嚼。
邦久「うめぇ!」
次々と高級料理店の料理の画像をパソコン画面に映す。
邦久、画面に向かってシャッターを切り、出てきた写真を食べ、
邦久「うんめぇ!」
邦久の後ろで、猫たちが床に落ちた食べかけの写真のにおいをかいでいる。
机の上に、たくさんの豪華な料理の写真が並ぶ。
邦久、それを嬉しそうに選び、食べ、はしゃぐ。
猫たちが床に落ちた写真を食べている。

○邦久の部屋(朝)
カーテンの隙間から光が差し込む。
邦久、食べ散らかした写真の中で眠っている。
邦久、幸せそうな顔で寝言を言う。
邦久「うーん……、もう腹いっぱい……」
ガリガリガリという音がする。
邦久、目を開き、ガバッと起き上がる。
3匹飼い猫たちが邦久の足にツメを立てたり、噛みついたりしている。邦久の足からは血が出ている。
邦久、猫を手で払いながら、
邦久「てめぇっ!」
猫が邦久に向かって「シャー」という。
猫たちが次々に邦久に飛び掛る。
邦久「う、うわあああ!」
邦久、猫たちに押し倒される。
床に、最初に撮った写真が落ちている。
邦久が食べ残した、邦久の足の部分が食い散らかされている。
写真に血がしたたる。

【了】

Photo : ©clearether

いただいたご支援は、今後の更なる創作活動のために活用したいと思っています。アプリゲーム作ったり、アニメ作ったり、夢があるの!(>ェ<)