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(まだアニメ5話やったところだけれども)『私の推しは悪役令嬢。』とは何だったのか

 テレビアニメ版『私の推しは悪役令嬢。』(以下、『わた推し』と省略)の第5話が放送されましたが、あの時の騒ぎは何だったのかというぐらいに話題として盛り上がらなくなりました。

 まず致命的なのが、『わた推し』、純粋に面白くありません。あまりに致命的です。

 面白くない理由は主に2点あります。まず1点目として、原作がネット小説ということです。ネット小説は短い話ごとに発表され、その都度に読者から強く評価される形態であるため、テレビアニメという媒体の尺には初めから向いていません。『わた推し』に限らず、ネット小説そのものがアニメ化には厳しいのです。

 そして、もう1点。そもそも『わた推し』という作品はアニメ化されたネット小説基準としては評価されていたとは言い難い程度の人気であり、紙の書籍版がしっかりと販売されていませんでした。

 紙の書籍版第1巻が2021年12月18日発売。

 続きの第2巻が2022年6月17日発売。

 そして第3巻は2022年12月16日発売。で、この1~3巻の中身というのが、2019年に発売されたkindle版2巻までの内容に加筆したものであり、アニメ化が無ければ紙に印刷して売ることができなかっただろうという市場評価なのです。(ちなみに、kindle版は全5巻で発売中です。)

 アニメ版が壮絶なクソアニメとして散々バカにされ「スマホ太郎」などと揶揄された『異世界はスマートフォンとともに。』なんて、安定してノベル本を発行し続け、2023年10月には第29巻が発売されていますし、かなり間を空けつつもアニメ版も第2シーズンを製作・放送しています。「なろう小説」に関しては、原作の人気に乗ってアニメ版をやるといったようなムードを見ることが多く、むしろアニメから人気を作り直そうとしているかのように見えてしまう『わた推し』はかなり異端とも感じます。


 さて。結局『わた推し』は何だったのでしょうか。アニメ版第3話のあのエピソードが素晴らしいという大絶賛の嵐でしたが、トータルとして見たら散々なのは指摘されている通りですし、主人公の蛮行にはモデルとしている芸能人が存在するといった説明の妥当性が疑わしいなど、全体の流れを抜きにしてもおかしなところだらけです。

 「なろう小説」では、転生した主人公が中世あたりの人に現代知識を見せつけ尊敬を集めるという、一種のテンプレが存在し、ネットではそれを揶揄の対象として取り上げられることがよくありました。

 『わた推し』アニメ版第3話の例の描写は単なる一般論をめちゃくちゃな形で掲げただけにすぎませんが、都合の悪い部分は存在しないことにしてしまい、その上さらに従来作品を見下してまで作品を持ち上げるという行為は、前述の「なろう小説」のテンプレをフィクションではない現実世界でやっているだけなのです。

 そういったスタンスで作品を神聖視している方は、なるべく早く自身を見つめ直してほしいと思います。


 そもそも「◯◯を取り上げたから素晴らしい!」という安易すぎる発想は、ガンダムを名乗る謎のテレビアニメ『水星の魔女』において、公式から散々砂をかけられた時点で、いいかげん改めるのが当然ではないかと私は思いますが…。


 原作小説kindle版は2019年2月~2021年8月リリースの全5巻で、2023年11月1日現在で全巻kindle unlimited対象です。

 少々ややこしくなっているのですが、原作ノベルの紙版は「Revolution」というサブタイトルが付いて発売されています。kindle版の2巻までの内容を3巻におさめているようです。

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