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麗しき未来の文化遺産ホテルへ。

かつて領事館だった建物がホテルに生まれ変わると聞いて、ひと足早く泊まりに行った。

未来のホテルは、まだ改築仕様書すらできてはいない。
だけど足を運ぶと、そこにはボクよりミーコが早くいて、窓からずっと遠くへ手を振り続けていた。
ベルボーイは穏やかで、ボクとミーコ以外には色のない、細い線のような日だった。

未来を予見しているのとは違う。
いずれこうなるだろうという勝手な思い込みの連鎖ーー隣三軒両隣親戚一同友人知人と連なるつながりが手に手をとるように、物語をつないでいくだけなのだ。

事実に根はあっても、そこから伸びる芽は事実無根の夢物語。経過は憶測。こんなだから、当たることもあれば、はずれることもある。
人はそんなボクを「妄想逞しすぎ」と呆れ返る。

確かにボクの妄想は過ぎるところがある。誰と話しても「そこまで考える人はないよ」と言われるところまで突っ走る。

架空世界で一方的に悪者のレッテルを貼られた鬼の悪さは、生きるためのまっとうな理由という原点により発した閃光の目眩しだったことを、昨今のムーブメントが暴いてみせた。一方的な押しつけが生む、わだかまりの異物感は、落ち着くべきところへ帰着したことで、みごとに消え去った。

以来、事実解明にこれと同じ轍を踏むようになった。
すると、投げられた波紋の意味が納得という凪を呼び込むまでコマを進めることになる。これが突っ走ったととられる所以。

ボクは、納得へ帰っていこうとしているだけなのだ。

ホテルとして生まれ変わる文化遺産へのひと足お先の旅は、手を振るミーコがボクに気づき、目を合わせるところで転換を迎える。

第2幕、間もなく開演。


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