「私のお墓の前で嘆かないでください」
年に一度しか会いにきてもらえないなんて、寂しすぎる。しかも周りは死んだ人ばっかりなんだよ。怖すぎる。
私が死んだなら、わざわざ遠い道のりを時間をかけて金かけて来てほしくはないから、どうぞ海に撒いてくださいな。
海なら来やすいでしょ? とりあえずご近所の海でいいんだから。それにどこにだって行きやすいし。リゾートも手中にある。マイアミもカンクンも、マウイにだって行けてしまう。
海水浴の夏は賑わうし、青春真っ只中の体育会ノリ若人は熱く沈む夕日に叫んでいくし、釣り人の獲物にちょっかい出すのは楽しいし、割と退屈しなくて済む。
樹木葬もいいかなあ。死を以て成長を見守る。哲学じみた終活後を送るって、拓けた未来って感じで悪かない。
月への散骨も現実味を帯びてくるかな? 見上げればそこに君がいてってスタンス。だけど、月が墓標になるってのはホラーじみてて、気味悪がる人も出てきそう。それに、どこぞのビジネスマンが『墓参り月ツアー』なんてのを企画して、大儲けを目論んじゃうかもしれんしな。旅費が高くつきすぎるって弊害は出てくるし。ここまでエスカレートすると、本末転倒って問題も起きる。だって、時間と金をかけてまで来てほしくないから散骨望んでいるのだし。見上げるだけの墓参りで完結するなら、安く上がるし、いつでもみんなの顔が見れるからいいんだけど。
月葬ーー実現したら、いったいいくらかかるんだろうね?
お彼岸で弟の墓参りに行った。同じ墓に私が入ることはない。ではどこに入る? 終の住処はまだ決まっていない。
そしてその時に思ったのだった。年に一度しか来てもらえないお墓には入りたくないなと。
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