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一命、一口。

一命ひといのち一口ひとくち

 口
べらしに、座に、人だ。人の命ってひと、ふたって数えるものだったのね。
 思いをきゅっと絞っていくと、昔の人は食べることこそ命をつなぐ最大にして唯一の道筋。マンモス1頭獲ってくりゃ、何百人分の命がつながる。
 だけど1食は永遠じゃないから、お腹が空けばまたマンモス捕りに命を張って狩りに行く。
 摂れば天国、捕らぬは地獄。よその収穫ぶん盗るわけにはいかないから、食い扶持求めて彷徨うノマド。

 口に含んだ肉のあの旨み、忘れることなどできにゃせぬ。
 で、歩く肉、探す。口中よだれにまみれても、取らぬ狸の皮算用には溺れない。かくして馳走を求め、広い原野をどこまでも。どこぞにマンモスいないかな。

 食に命を捧げずに済むようになった現代人は、食こそ命の時代と比較すりゃ、ずいぶんと口が上品にまとまった。トトロの雄叫び、あの巨大な口に対すれば、おちょぼ口といったところでござんしょか。のびやか優美な皿にちょこんと載ったフレンチを、口紅落とさず優雅に食する、そんなハイソなお口になっている。
 たとえふだんは3分がまんのカップ麺で食生活が細くても、ありつきたい時にありつける幸せ。骨付き肉にかぶりついてたマンモス一筋のがっつき時代じゃないんだもの。どうにかせずとも三度の飯にはありつける。

 食うが命の時代は終わり、今はがっついて食わねども高楊枝で見栄切られる時代に入ってる。食うには食うんが、食うに困らぬ現代は「食う」に躍起にならずとも済む時代になっている。
 で、食うn代わりに台頭してきたのが手のひらサイズのLINEなあいつ。あ、そうそう、noteもおっけぇ、コンビニピッもお手のもののアイツが命をつなぐようになった。
 現代は、スマホがなけりゃあ生きていけない時代になったのよ。

 なんとも食えない話だけれど、時代はこれだけ進歩したって、「食う、食わない」「食える、食えない」から人は逃れられない生き物のようでして。

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