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どっしりとした苦みをにごりで柔らかに包み込む 「ARIGA TOSACO」で伝える たくさんの「ありがとう」

本と囲碁を愛する、優しくて穏やかな父


父は「自分のことは自分で決めなさい」が口癖で、少し放任気味。でも相談すればどんなに疲れていても眠そうな顔ひとつせずに話を聞いてくれたし、いつだって最強の味方でいてくれた。
わたしはそんな父が大好きだったし、心底かっこいいと思っていた。

でもいつからだろう。

父に相談をすることはなくなった。相談事は友人や先輩にしたし、「甘える」先は恋人になった。多忙で家にいない父がたまに早く帰ってきても、一緒に食卓を囲むことななかったし、「最近どうだ」には「まぁまぁ」としか答えたくなくなった。
反抗期なんてまぁそんなもんだろう。でもそのまま父は単身赴任になり、わたしは大学を機に家を出て、東京で就職をした。
父との関係性は、いまだなんとなくぎくしゃくしたままだ。

社会人も数年目。仕事の大変さを実感する度に、ふと父の姿を思い出す。
毎晩わたしたちが眠ったあとに帰ってきて、朝はわたしたちが起きるより早く家をでていた。休日出勤だってざらにあったように思う。
それでもいつだって、穏やかにわたしの話を聞いてくれた父。

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クラフトビールの味を覚えた今、父の日にプレゼントを贈りたくなった。
父に贈りたい、ぴったりのビールを見つけたのだ。

ホップの苦みを「にごり」で柔らかに包み込む


それは高知県にある「TOSACO」が自身の周年記念に合わせてリリースする、期間限定ビール「ARIGA TOSACO」。
今年はヘイジーセッションIPAスタイルのビールだ。
ボディは少し濁りのある、とろみのある黄金色。泡立ちはとても豊かで、グラスに鼻を近づけると高知県産の文旦が爽やかに香る。
口に含むと気持ちの良い香り以上に、ずしんとした重みのある苦みのインパクトが広がる。でもそれは嘘のようにふわりと消え、後には心地の良い苦みの感覚と、麦の芳醇なうまみだけが穏やかに残る。ホップやアロマのインパクトは強く感じるのに、軽やか。でも苦みの余韻は喉の奥の方でずっと残り続ける。

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この「苦味の感覚はしっかりとあるのに、苦いと感じない」という味わいは“濁り”に秘密があるという。
浮遊性の高い酵母を使用し、沈殿させずに漂わせることでビールに濁りを与え、そしてフレークドオーツを使うことで、粘度を高くし、とろみをつける。
濁りととろみにより、ホップを大量に使用しても舌触りがよくなり、苦みを感じにくくなるのだ。

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初めてこのビールを飲んだ時、ぱっと父の背中が脳裏に浮かんだ。
穏やかで柔らかなのに、強い芯がある。
「ARIGA TOSACO」はそんな父のイメージにぴったりと重なった。

一本のビールの中に込めた様々な「ありがとう」の気持ち


―感謝を伝えたい時には「ありがとさこ」
―ありがとうを伝えるビール

HPに書かれている「ARIGA TOSACO」の紹介。
では「ARIGA TOSACO」はなぜ「ありがとう」を伝えるのにぴったりなのか。ブルワーの瀬戸口さんはこう語っていた。
「ARIGA TOSACOは様々な種類のホップを使用しています。ありがとうにもいろんな想いがありますよね。「育ててくれてありがとう」「見守ってくれてありがとう」「元気でいてくれてありがとう」そんなたくさんのありがとうを、ホップの多様性で表現できればと思っています。「ありがとう」の言葉と共にビールを飲み込んで、長い余韻と共に心に染み込ませてもらえればうれしいなと思っています」

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複数のホップで表現されたたくさんの「ありがとう」。中には伝えられなかった「ありがとう」や素直になれなかった「ありがとう」もあるだろう。でもそんなありがとうを全部ひっくるめて、とろりとしたにごりで優しく包み込み、長い余韻と共に感謝の気持ちを伝えてくれるのだ。

プレゼントを渡して喜ぶ父の笑顔


小さい頃はよく、わたしは父にプレゼントをしていた。それは小さな折り紙に書いた似顔絵だったり、ブロックで組み立てた「父のお部屋」だったり。いつも帰りの遅かった父を待って、妹と一緒につくった。
「パパきっと喜ぶと思うよー!」
母はそんなわたしたちを、ビールを飲みながら嬉しそうに見つめていたっけ。

でも、いつだって父の帰宅はわたしたちが起きていられる限界を超えた時間帯だったし、朝はわたしたちが起きるよりもずっと早かったから、父に直接感想を聞くことはできなかった。
朝起きるとプレゼントは机の端の方に置かれており、側には「ありがとう」と几帳面な文字で書かれれた手紙と、サクマドロップが2粒置いてあった。

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思えば、プレゼントを渡して喜ぶ父の笑顔をわたしは見たことがないかもしれない。

父の日にビールが届いたら、オンライン飲みをしてみようか。
きっと一番はしゃぐいで騒ぐのは母だろうけど。目を細めて、父は静かに、でも嬉しそうに笑ってくれるはずだ。
父をイメージしたビールだといったら、一体どんな顔をするのだろう。

文 : 小林加苗

・HP

・Instagram

https://www.instagram.com/tosaco.kochi_campagne_brewery/

・Facebook

http://urx.space/Vmqn


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