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映画レビュー#002 『はちどり』(2018年)

「理不尽なことが多いわよね」
ヨンジは言った。
「可哀想と思わないで」
とも。


主人公ウニと、立ち退きに反対する家を見ながらの会話だったけど、本当にそのことだけを言ってるわけじゃないだろう。


『パラサイト 半地下の家族』以来、久しぶりに劇場で観る韓国映画。
あちらの主人公一家は、貧乏だけど家族仲良く。一方、今作『はちどり』ではバキバキの家父長制で家族仲、夫婦仲も…。


観ている途中で、何度も自分が男性であることに少し居心地が悪くなった。
登場する男性陣が全員が嫌だった。
父親も兄も、彼氏も先生も。あの圧はなんなんだろう。先生ホントにクソ。でも間違っているのは先生ではなく、社会や構造なのか?
まぁあとあの年頃の彼氏はあんなもんか。


家父長制なんてバカバカしいし、男尊女卑も反対。ジェンダーイコーリティは重要。そう思っている。

でもなんであんなに居心地悪かったんだろう。無意識で自分でもそういう差別に加担している気がするからだろうか。ここで描かれた父親と同じ部分は1ミリもないと言い切れないからだろうか。はぁ嫌だ。
そう思いながら観ていたら結構ショックだった。


『パラサイト 半地下の家族』は経済格差の話だったけど、『はちどり』はジェンダーギャップについてだ。
経済的余裕も、ヨンジに貸した本からしても文化的資本は『はちどり』のキム一家の方が高そうだけど、どっちが幸せそうなのかわからない。こういう対比ができるのは面白い。


『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』を観た時も思ったけど、中学2年生・14歳の難しさ・ナイーブさは世界共通。
ウニを娘のように思いながら、かつ自分の過去を思い出しながら観ていたので、クラブ(っぽいとこ)行ってハメ外すのも、後輩から好意を寄せられるのも、いろいろと「いいぞ、もっとやれ」って思って観ていた。あれはあの世代特有のことだろう。


韓国映画は(と言ってもまだそんなに本数観ていないのだけど)、社会や構造に対する問題・疑問を炙り出すような感じがあっていいなぁと思う。
『はちどり』でもジェンダーギャップ・家父長制だけでなく、学歴社会、スクールカースト、いじめ、職業観、勝ち組負け組思想、北朝鮮との関係、経済成長などいろいろ盛り込まれていたと思う。


なんで女性が耐えることが前提になっているのか。
母親がウニを見つめる時、彼女は何を想っていたのか。なぜ呼ばれても気が付かないのか。
「殴られないで」「殴られたときは声を上げて」。なんでこんな当たり前のことを言わなくてはいけないのか。
父と兄はなぜあんなに泣いたのか。


人生まだまだ勉強だな。私のスケッチブックには何か描くことができるだろうか。そもそも持っているかな。手を見て指が動くか確認しなくちゃ。

小学6年生の娘と奥さんと一緒に観てきた。
娘は何か思ったかしら。
ウニ可愛かった。
チヂミ食べたくなった。


パンフレット欲しかったんだけど、「当劇場では取り扱いがありません」と言われてしまった。売り切れだったのかな?残念。

鑑賞日2020年8月1日(劇場)

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