勝手にプレイリスト 〜新宿二丁目のほがらかな人々/ほぼ日刊イトイ新聞編〜

『新宿二丁目のほがらかな人々』(ほぼ日刊イトイ新聞編・角川文庫発行)は、ゲイ3人の鼎談集だ。もともとはほぼ日でWEBコンテンツとして連載をしていたものが、書籍化されている。ゲイカップル1組と、その友人1人の3人が、恋愛の話題をメインに、プレゼントの話や仕事の話、習い事の話、家族との関係まで、とめどなくおしゃべりを繰り広げてゆく。レストランデートをしているカップルの素敵なエピソードから、反対にことごとくマナー違反だった人へのダメ出し、好きな人に作りたいご飯、出張土産のプレゼントを旦那にねだる女子への酷評など、ハイテンションで会話が進んでいくのは、それだけでラジオのようなエンターテインメントなのだが、わたしがこの本をたまに読み返すのは、彼らの生きることへの一生懸命さや、全人格的で生々しく他者と関わろうとする感情的で必死な姿勢にハッとするから。他者と関わり合うときに、相手の気持ちの裏の裏まで読み、自分が行動することによって相手がどう動くかまで想像力を働かせるような、理性的なコミュニケーションにハッとするから。生きていくなかで、ここまで真剣に他者を求め、感情を通わせ体当たりで接したことはないんじゃないか、と思うと同時に、ここまで日常的に理性を働かせて他者と関わり合ってもいないと思う。要するに、自分がいかにボンヤリと生きているかを反省したくなる。本の会話のなかから伝わってくる、彼らの他者と関わり合おうとする、もっと言えば、せっかく他者とコミュニケーションを育める生き物に生まれた人間としての日常を真剣に生きようとする、そういう熱量がもうすごいのだ。

ぼくがその人のことを好きになるということは、ぼくの体の中にぼくがおっきい木の種を植えるようなものなの。
木が育つということは、木の養分を摂って、土の中に根っこを張っていくわけでしょ? 土と木は別々のもんなんだけど、木が大きく育つほど、抜こうとすると土を取っていかれるんだよ。雑草だったらば、あんまり土は持っていかれないんだけど。(p,11)

振り返ってみると、他者から知らぬ間に影響を受けていて、自分の血となり肉となっていることはもちろんある。おこがましくも、わたしも誰かにとってそんな存在になれたらいいな、とも思う。けれども意識的に、互いに自分の生命を分け与えるような関わり合いをするぞ、と覚悟した上で人と関わりあうのは、また別の次元の話で、ものすごいエネルギーを使う、人生の大仕事だと思う。それは、自分の生をしっかり生かして、ひとりでも十分すぎるくらい生きていけるからこそできる、他者に命を分け与えるという大仕事なのではないか。

人と関わりあうことに真剣にエネルギーを使えないで、どこで人生の大仕事をするのよ?とも自分で思いつつ、他者に自分をさらけ出したり、他者に対して両手を広げて受け止めたりするのが苦手なのは、そもそもそ自分の生をしっかり生きてないのかなぁとも思うのだ。

というところで、「こんなに真剣に生きてないぜよ・・・」と反省してしまう部分が根っこにありながらも、本のあっけらかんとした明るさや、会話の端々で発揮されるおしゃれ感のある音楽を集めてみた。
私が普段から聞いている中からの選曲なので、偏りがあるのはあしからず。

一曲目:never young beach/明るい未来

二曲目:土岐麻子/Valentine

三曲目:トム・ミッシュ/Lost In Paris

四曲目:Nada Surf/Are You Lighining

五曲目:宇多田ヒカル/ともだち with 小袋成彬

六曲目:星野源/フィルム

七曲目:Nulbarich/Sweet and Sour


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