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嘘でもいいから、共感してほしかった

不登校の父をやっている「こうだ」が、不登校の親・子の話をじっくり聞いていく連載の第2回です。
今回は、当会のお茶っこ会(不登校の親のお話し会)にちょくちょく顔を出してくれている、中学3年生のくるみさんにお話を聞きました。(前回続き)

■ 今回話を聞いた方
くるみさん(15歳女性)
・小学5年生から、友人関係などが原因で学校へ生きづらくなり、現在(中3)まで不登校に。
・来春から高校へ進学予定。
・「今のタイミングで、昔のことを思い返してみたかった」「話をするのが楽しそう」という理由で、今回のインタビューを引き受けてくれました。

■ 関連記事
意地悪されて嫌なはずなのに、なぜかその友達に依存していた(くるみさん①)
嘘でもいいから共感してほしかった(くるみさん②)→当記事
Twitterは気が楽だった(くるみさん③)
あとがき:優しい人は、世界を良くすることに貢献する人だと思う(くるみさん④)

嘘でもいいから、共感してほしかった

こうだ(以下、「こ」):
前回は、不登校になるまでの経緯とその時に感じたことを話してもらいました。
不登校になってからは、どんなふうに過ごしていましたか?

くるみ(以下、「く」):
ひたすらゲームと動画を見ていました。
スマホが禁止されたときは、絵をかいたりゴロゴロしたりして過ごしていました。
このころは、本当につらい気持ちと、混乱する気持ちを抱えていました。

親は、当初何とか学校に行かせようと必死だったと思います。
無理やり連れていかれることと、友達にからかわれることが嫌で、毎日朝が来るのが怖かったです。

こ:
うんうん。

く:
また、これは私が悪いのですが、悩んでいることを人に話すとき、ヘラヘラと笑ってしまう癖がありました。
今もその癖は残っています。
そのせいであまり深刻さや、自分が何に苦しんでいるかをうまく伝えられませんでした

こ:
そうなんだね。
私は、もういい大人ですが、いまだに感情を表に出すことや、それ以前に自分の素直な感情を感じること自体が苦手だったりするので、少し気持ちが分かるかもしれない。
その時、周りの大人にしてほしかったことはありますか?

く:
とにかく話を聞いて欲しかったです。
嘘でもいいから共感してくれれば、少しは気が楽になったかも
と思います。
今となっては分からないですが。

「でも、本当に大丈夫?」

く:
また、何人か周りの大人に相談しましたが、嫌だと訴えてもあまり気に留めてくれなかったり、嫌なことをしてくる人たちを庇うようなことを言われたのが、当時とても傷ついていました。
ただ、それをヘラヘラしながらでしか伝えられなかったから、そこまで傷ついていないと受け取られるのも当然だったかな、とも思います。

こ:
うーん、そうかぁ。

く:
今思えば、「でも、本当に大丈夫?」と一歩踏み込んで話を聞いてくれたら、少し救われたのかもしれないです。
感情を表に出すのが苦手な子に対しては、「でも本当に大丈夫?」と言ってくれたらなと思います。

私も、この経験がなかったら、話を聞ける人にはなれないと思う

こ:
自分が大人の立場だったらこうするな、ということはありますか?

く:
私は不登校を経験しているので、とにかく話を聞いてあげる、嘘でもいいから共感してみる、という、当時してほしかったことをしてみると思います。
ただ、不登校の経験をせずに大人になっていたら、他の大人と同じように、しっかり話を聞くことはできず、傷つけてしまう人になっていると思います

こ:
なるほどー、えらいねぇ。
でも私は聞いていて、そうは思わなかったかなぁ。
もちろん、「経験したから、同じことはしない」という学びは大いに生かされると思うけど、「この経験がなければ同じことをしてしまうかも」という謙虚な姿勢と想像力をくるみさんは持っているから、きっとこの経験をしていなくても、話を聞いてあげられる人になっていたんじゃないかなぁと思うよ。

く:
そうかなぁ。でも嬉しいです。

どうにか助けてほしい気持ちと、自分で解決したい気持ちが、両方あった

こ:
はじめに行き渋りを始めた、学校に行きたくないと言った時は、どんな気持ちでしたか?

く:
どうにか助けてほしい、味方になってほしい、という気持ちだったと思います。
でも、悩みを話したりするのが恥ずかしかったり、親に頼るのが情けなかったりして、一人で解決したい気持ちもありました

こ:
そうなんだね。
不登校新聞の石井志昴さんという方も、「子どもが『学校に行きたくない』と言った時、親はそれが『問題のスタート』と感じるが、子どもにとっては『最終段階のSOS』なのだ』ということを仰っていました。(https://www.youtube.com/watch?v=JkCmkf9RyI

私にとっては、なかなか耳が痛い話で、子どもが学校に行けない状態になった時、すぐには受け入れられなかったです。

子どもを尊重して、子どもの話をしっかり聞くことが大事だと、改めて思います。

ただ怠けたくてゲームや動画をしていたのではなく、辛い気持ちから目を逸らしたかった

く:
それと、最近気づいたのですが、当時ゲームや動画を見ていたのは、ただ怠けたかったのではなく、辛い気持ちから目を逸らしたくて没頭していたのだと思いました。

こ:
その通りだと思うよ!
すごくいい気づきだと思う。
その期間は、必要な充電期間だったと、断言するよ。
それに自分で気づいたことも、すごいことだと思う

く:
当時、ずっと気分が落ち込んでいて、なかなか浮上することが出来ませんでした。
今は少しずつですが、回復しだしている気がします。

こ:
そうなんだね。

ここまでの話を聞いて、くるみさんが、今まで深く悩み、考えてきたことが伝わってきます
他人と比べるものではないけど、多くの人は、そこまで深く悩むことはできないと思います。

しんどいと思うけど、それは一つの才能だと思います。
今は自分自身を守るのに、その才能を使っているのだと思います。守るだけの価値が必ずあります。
また、その才能は、必ずしも何かに役立てる必要はないですが、将来はきっと人の役にも立ってしまうでしょう
回復にはまだ時間がかかると思うけど、たくさんの人に頼りながら、少しずつやっていきましょう・・・!

(続く)

■ この記事について
当記事は、大人たちから変わろうの会の運営メンバーの「こうだ」が、不登校の親・子の話をじっくり聞いて、執筆しています。

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