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優しい人は、世界を良くすることに貢献する人だと思う

本記事は、当会の運営メンバーで、不登校の父をやっている「こうだ」が、不登校の親・子の話をじっくり聞いていく連載の第4回です。
今回は、当会のお茶っこ会(不登校の親のお話し会)にちょくちょく顔を出してくれている、中学3年生のくるみさんにお話を聞きました。
当記事はそのあとがきです。

■ 今回話を聞いた方
くるみさん(15歳女子 ※当時)
・小学5年生から、友人関係などが原因で学校へ生きづらくなり、現在(中3)まで不登校に。
・来春から高校へ進学予定。
・「今のタイミングで、昔のことを思い返してみたかった」「話をするのが楽しそう」という理由で、今回のインタビューを引き受けてくれました。

■ 関連記事
意地悪されて嫌なはずなのに、なぜかその友達に依存していた(くるみさん①)
嘘でもいいから共感してほしかった(くるみさん②)
Twitterは気が楽だった(くるみさん③)
あとがき:優しい人は、世界を良くすることに貢献する人だと思う(くるみさん④)→当記事

私は、はたして子どもの声を聞けているか

今回、くるみさんには不登校になった経緯や、その時に考えたことを話してもらいました。
「ただ話を聞いて欲しかった」という言葉は、私も身につまされるというか、私も不登校の子を持つ父として、息子の声を聞けてるか、これからも聞き続けられるか、自問するきっかけになりました。

不登校に関係ないかもしれませんが、私たち親は、子どもと自分が全く別の人間であるということに関して、悩みがちではないでしょうか。(私だけでしょうか。)

私自身、中学時代は苦しいものでしたが、小学校時代は楽しく過ごしていました。
というか、あまり考えていなかったというか、考える必要なく、環境になじめていたというか。
そのため、息子が小学校に行けなくなった時、すぐには受け入れることが出来ませんでした。

「『行くか行かないか』ではなく、『どうやったら行けるか』を考えようよ。」
「分かってると思うけど、学校って、行かないといけないものだからさ。」
「今は実感ないかもしれないけど、みんなと過ごすことで、周りと一緒に成長していく部分もあるから。」
「家にずっと居ても、成長機会が失われちゃうから。」

そんなことを息子にも言っていたし、妻にも話していました。
彼の声を聞けていなかったと思います。

彼に寄り添いたい、何に苦しんでいるかを知りたい、とは思っていたから、「どんなところが辛い?」と聞いたりしていたけど、
そんなことよりも、あの時はまず彼の心の安全を守るべきだったなと思います。

なぜそれが出来なかったかと考えると、私に足りなかったのは、
自分と子どもは違うということを、受け入れることだったかなと思います。
自分と重ねて考えることしか出来ていなかった。
でも、彼と私は全く違う人間だから、自分と重ねても彼を理解できない。

子どもからしても、この人に話しても理解されない、と思ってしまったら、話す気も起きないだろうなと。
難しいことですが、彼を彼のままに捉えて、寄り添うことが出来ればと思っています。
そのためには知識も必要だし、自分の心の余裕とかも、いろいろ必要で、
彼は私を成長させてくれていると思います

彼女のイラストの奥に、訴えたい何かを感じた

ところで、今回お話を聞いたくるみさんとは、お茶っこ会(当会で行っている不登校の親同士のお話し会)で初めて会いました。
私はこのインタビュー企画をやってみたいなぁと構想(妄想)を始めていたところ、ある日のお茶っこ会で、流れでくるみさんが書いているイラストを見せてもらいました。

くるみさんは静かな人で、あまり話をしたことがなかったですが、
見せてもらったイラストの奥に、「この人はもっと話したいことがありそう」という直観が働きました。
その直観は的中して、当会代表のともみさんとの3人のグループLINEで、いたずらに古傷に触らないように細心の注意を払いつつ、話を少しずつ聞いていくと、
彼女から怒涛のように言葉があふれ出し、私たちは圧倒されることになるのでした。

彼女の素晴らしいところはたくさんあるのですが、私はその中でも、
彼女のもつ「優しさ」に、非凡なもの感じています。

優しい人は、世界を良くすることに貢献する人だと思う

彼女はとても優しい人だと思います。
記事にしたこと以外のエピソードでは、彼女は古くからの友人とのLINEグループから抜けることに悩んでいました。

昔は仲が良かったけど、最近は少しギスギスというか、自分以外のメンバーが不安定で、互いに依存的になってきた。
Aさんと仲が良い自分にBさんが嫉妬して、くるみさんにAさんの悪口を言うようにしつこく強要してきた。
くるみさんは「ばーか(嘘を付いたときの表情の炭次郎の絵文字)」と返したりしていたが、
段々と居心地が悪くなり、LINEグループを抜けた。
自分はLINEグループを抜けてよかったのかと、悩んでいました。

私とともみさんは勿論、彼女の100%味方のスタンスで話を聞きましたが、
話を聞きながら、私はこのエピソードから、彼女の非凡な優しさを感じていました。
AさんもBさんも、誰も傷つけない発言を、いつも突き詰めて考えている。
自分の行動に対しても、傷つけたりしていないか、考えている。
私はこの件に限らず、
彼女は嫌われたりする不安があるから優しく振る舞うというよりも、
それ以前の、もっと根本の部分に、優しさを持つ人だと感じました。

これだけの言語化能力が彼女にはあるから、ある程度考えたら、自分は悪くないと結論づけても良いところを、
ずっと相手の立場に立って考え続けている。
彼女から打算的なものを感じず、真摯さを感じました。
(ただ、そのせいもあり、疲れてしまうことが多々あるようでした。)

私は、優しい人は、世界を良くすることに貢献する人だと思います
「優しい人は損をする」とか、「したたかに生きた方が得」とかというのは、何だかこう、ゼロサムゲームを前提とした貧しい発想、という感じがします。
私は、優しい人、自分の感性を信じて、他者を想像できる人が、
今ここに無い、新しい幸せを創造できるのだと思っています。

「優しい」をどう定義するかというところですが、
私は、「自分の幸福、他者の幸福を、妥協なく考え抜く」ことかなと思います。

彼女には、自分の感性を信じて、これからも生きて行って欲しいと思います。
また、その途中で不安になったら、これからもいつでも連絡してきて欲しいなと思います。

私の活動が、かえって不登校の家庭を苦しめていないか

私はおとかわ会で、キャンプの企画と、レンタルスペースでみんなでゲームをやる企画を、月1回ずつやっています。
学校行かなくても、学校以外の居場所を作って、大丈夫だと感じてもらうため、ささやかながら現在までに1年ほど続けています。

その中で私が悩むのが、この活動が、かえって不登校で悩む家庭を苦しめていないか?ということです。

様々な苦しめるパターンがあると思います。

おとかわ会のグループLINEで、子どもの笑顔があふれる活動報告をすることで、その活動に参加する気力が溜まっていない家庭が、孤独感を強める結果になっていないか。

子どもにも向き不向きがあって、キャンプやゲームが苦手、そもそも人が集まるところが無理な子どもが居る中で、
参加できない性質の子どもを責めるような気持ちを、お父さん・お母さんに生じさせていないか。

私がやりたいことは、キャンプやゲームそのものではなく、不登校の子どもやお父さん・お母さんに
大丈夫だと思ってもらうことだから、もしそのように苦しめていたとしたら、真逆の方向に進んでいます。

奥の奥にある、その人ならではの意思に触れたい

何とかそんな誤解を解きたいというか、
私は決して外でキャンプをやりたがるような明るい人間ではなく(笑)、
ただ安心できる場を作りたくて、そのための一つの手段としてやっているということを、
おとかわ会に参加いただいている方に伝えたいと思いました。

そんな中、初めてインタビューを受けていただいたのがくるみさんで、本当に良かったと思います。
彼女は学校の自分、Twitterの自分、家庭での自分、インタビューの自分、それぞれ全く違います。
それぞれの表面から見える部分の奥の奥に、彼女が固有に持つ言葉、優しさが詰まっています。

そんな彼女の話を聞くことを通じて、私がやりたいことを少し表現できた気がします。

「不登校」によって、他の誰とも違う自分の人生を、正面から考えざるを得ない状況に置かれる。
そこでそれぞれの子ども、お父さん・お母さんが突き詰めて考えたこと、
その奥の奥にある、その人ならではの意思に、私は尊さを感じます。

私はそれを知りたいし、心から肯定したいと思っています。

そのための手段として、今実施しているお茶っこ会とは少し違うアプローチで、
私一人の視点から、一人の人を掘り下げることをしてみたいと思います。

もちろん慎重にやらないといけないし、表現力・文章力もあまり自信ないから、すごく難しいですけど、挑戦してみようと思います。

(終)

■ この記事について
当記事は、大人たちから変わろうの会の運営メンバーで、不登校の子の父をやっている「こうだ」が、不登校の親・子の話をじっくり聞いて、執筆しています。

■ 大人たちから変わろうの会について
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千葉県我孫子市を中心に活動をしています。

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