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「疫病2020」を読んで

門田隆将著の「疫病2020」を読みました。やはりよく調査されている著書は奥が深くていいですね。説得力が違います。

一つの出来事は複雑に絡み合って水面下でしか動いていないように見えますが、もうこれ以上支えきれなくなると、必ず表面に、世の中に出てくるってことですね。ですから、2020年のパンデミックというのは、一都市で発生した疫病ですが、その疫病が表面に出て、パンデミックになるには多くの複合的な要因があったということがわかりやすく論じられています。

学生の頃、ある先生が「物事は急には始まらない」とおっしゃっていましたが、これはどこから見るかで解釈が変わってきます。学生の頃は、覚えていませんが、恐らく、将来xxをしたいと思ったら、急にはそうならないから、今からコツコツ用意しなさい、というような意味でおっしゃったんだと思います。今、いい年になって、この言葉を思い出すと、何かが発生し、その原因を探ると意外にも遠い昔のある行為から始まる、ということに気づきます。しかも、パンデミックのような世界を巻き込み、多くの方が犠牲になったという事件は、「ある都市の海鮮市場から、コウモリのウイルスが人に感染しました」、という突発的で表面的な出来事からでは決して起こらない、ということだと思います。

著作を読み進めてわかることは、政治的、文化的、経済的背景がそれぞれ一疾病にパンデミックになりうる土壌をしっかり育てて栄養を与えているということです。一度発生したら疾病自体もう止めようのない速さで感染し、それを止めようとする政府は人権よりもあらゆる権威を使って感染に歯止めをかけようとします。中国の場合は国としての表面的な威厳を守るため、自国の問題は自国で解決したと言わんばかりの、いかにも簡単にやってのけたことを自慢するかのように疾病を封じ込めました。武漢の住民の多くの命はそれによって救われたかもしれません。が、竹内亮監督のドキュメンタリー「お久しぶりです、武漢」(これもお勧めです。https://www.youtube.com/watch?v=N4ABOJ1y5iM&t=2093s)

を見て思いましたが、全ての人が巻き込まれ、誰にとっても悪夢のような戦いだったことが伺えます。その中国では未だ本当の沈静化には至ってないようで、北京周辺はまた市場を封鎖しています。さらに、門田氏の著書からこの「市場封鎖」、少なくとも、武漢の場合は、単なる茶番劇のようなものだったことがわかります。ですから、現在の北京の封鎖は感染を防ぐためだけであって、ウイルス発生地として封鎖されているのではないにしろ、もうこうなると眉唾物で見るしかありません。

そんな虚偽で固めた弾圧政治を行うお国が隣にいるのに、日本が本当に平和と言えるでしょうか。著作で日本の危うさが初めて理解できました。政治家の世の中の見識、事実の理解、未来予想などの資質はもう一度問われるべきだと思います。そして、私たちがよりよく選ぶ、ということも考えなければならないと思います。また、官僚にあっては、国家公務員試験の方法を変えたらどうかとも思いました。ボランティア力を試すとか、観察力や異文化理解力を測るとか。

過去に何度投票したか、と自分でも恥ずかしくなるほど、政治に無知無関心でしたが、世の中の動き方はこうなんだ、ということがこの著作で理解でき、自分の反省材料となるとともに、日本はどうするべきなのか、問われ、多くの答えが議論されるべきだと思いました。

最後に、ジャーナリズムっていうのはこういうものなのか、と初めて感じました。詳細な調査、議論の展開、事実と予測の一貫した構築、... とても興味深い一冊でした。

門田隆将著 「疾病2020」 産経新聞出版

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