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はじまりの場所 *story

あの日は色んな偶然が重なり、
あなたとその灯台を訪れた。

はじめて登る螺旋階段は、
その暗さと冷たさ、
その終わりのみえなさに怖さを覚えた。

やっと階段を登りきったと思いきや、
最後はなんと梯子。

何も知らず、
ワンピースを着てきたことを後悔した。

最初の1段目を登る瞬間、
螺旋階段から吹き上げてくる風に
ワンピースがもちあげられた。

下で目を覆うあなたに、
自分の無鉄砲さを心から恥じた。
普段どんな鎧を着ていようとも、
私はもともとドジなのだ。

そんな恥ずかしさやら
自分への残念感を持ったまま、
灯台の暗い世界から、外に出た。

その瞬間。

走り抜けるような海風にぶつかった。

見渡す海は、アクアグリーンと深い青が混ざり、
水平線は空と繋がる。

さっきまでの心は、どこか遠くへ吹き飛んだ。

人の心は本来、そうあって良かったのだ。
ただその一瞬に生き、前の瞬間を忘れる。

あの場所が私のはじまりの場所。

あの日、あなたと出逢ったことが
これからの全てを変えていく。

「あなたの人生は、あなたのもので
 他の誰のものでもないよ?」

そんな当たり前のことを、
私はずっと忘れていた。

誰かのために生きようと、
誰かのためにならない、
迷惑をかける自分は不要だと、
心の底から思っていた。

いつの間にか、人に迷惑をかける
本来の自分を影に押し込めるようになった。
そこから全ての歯車が狂いはじめた。

今考えれば、当たり前だ。
本来の自分を押し込めて、
残る自分はがらんどう。

そんな空っぽで、自分も大事な人も
守れるはずはなかった。

空っぽな自分の鎧を、外側からぶち壊す。
たとえ狂ったかと思われても、もういい。

人は本来、
型に収まりきるようなものではない。

収まらないからこそ、
溢れたものが多様な世界をつくっていく。