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ドリアンとの歩みとアルコールの関係。

前回の note(ドリアンスイーツ)を読んで下さった方が、こんなコメントをくれた。「かつてマラッカでドリアンチェンドルの店に入ったのに、ドリアンが怖くて普通のチェンドルをオーダーしてしまった臆病者です」。

わかります。匂いはガス漏れとか、腐った玉ねぎなどといわれ、食感はクリームのように正体のないやわらかさ。そして甘さの奥にほのかな苦みのある味なぞいわれても、食べたことのない人には想像しがたく、これ、怖いです。

じつはドリアン、この独特な味がゆえに、1回めの挑戦で「おいしい」と感じる人は、かなり稀。何度か試しているうちに、おっ? おおっ?! おおーー!!! と段階的に好きになっていくもの。実際、周りの友人を見ても、このパターンが多い。

かくいうわたしも、初ドリアンはちっともおいしいくなかった。第一印象を言葉にすると、“おかずっぽい”。“クリームシチューに似ている…”だった。

食べ慣れた今ではドリアンにシチューっぽさは皆無なのに、なぜそう思ったかというと、きっと、初めて食べる味に脳が混乱し “これは果物じゃない。あえていえばシチュー” とそれまで食べたことのある味に無理やり結びつけてしまったからだと思う。

ところが、2回めになると “この味はドリアンという果物らしい” と脳が認識し始めたようで、おかずっぽさが消え、意外に平気に。そして3回めに “すごくおいしい!” とドリアン脳がみごと開通。ちなみに、どのタイミングで、どのドリアンが、その人の心を射止めるかはそれぞれで、わたしの場合、冷蔵庫で冷やしたドリアンで夢中になった。

なので、もしドリアンに興味があるなら、1度であきらめず、数回は試してほしい。初めはおいしくなくても、のちにドリアンという名を聞くだけで、ワー!と小躍りしたくなるほど好きになる可能性は多いにある。


さて、ドリアンといえば、かならず語られるのが、アルコールとの関係。

『ドリアン――果物の王』(塚谷裕一著)によると

「ドリアンと酒をいっしょに食べてはいけない、というのは、東南アジアでかなり広く、また本気で信じられている神話である。――実際、私たちの身の回りの経験で見るかぎり、問題はなさそうである。――あるいはこういう可能性もある。昔、栄養水準の低かった時代には、ちょっとカロリーが高い物を摂取すると、いろいろ障害が出たものだ。たとえば戦後すぐのころは、チョコレートやピーナッツを食べ過ぎると、鼻血が出る、という話しが、普通に語られていた」とある。

体験から考えると、ドリアンとアルコールの食べ合わせは、量や体質、そのときの状況によって違うと思う。どれぐらいの量のドリアンを食べるか、どれぐらいの酒を飲んだか、その人の酒への強さ、そしてドリアンを食べ慣れた人か、初体験の人によっても、からだの反応が違う。

わたしの場合、ドリアンは大好きだけど、あまりたくさんは食べられない。濃厚な味で満腹感が強く、カロリーも気になる。先の本によると、ドリアンはみかんやバナナに比べて、カロリー、脂質ともに高く、森のバターといわれるアボガドなみ。サイズから計算すると、もし丸ごと1個ドリアンを食べたとすると、アボガドを5~6個一度に食べたことになる。ひょー。

また、ドリアンには強壮作用があり、強烈なにおいの中にはアルコールっぽさもあるそうで、食べると高揚感がうまれるのも事実。そして、ドリアンを食べるとからだが熱くなり、胃が膨張したように感じることもたしかにある。「ドリアンは体を熱くするので、体を冷やすマンゴスチンと一緒に食べるといいよ」とマレーシア人はかならず言うので、できるだけその教えを守るようにしている。

実際、アスリさんは、丸ごと2個を一気食いしたら、突然倒れてしまい、救急車で運ばれた。みっちゃんは、夕食をたっぷり採った後にドリアンを食べたところ、激しい胃痛におそわれた。そんな体験談は周りにごろごろあるので、食べ過ぎにはくれぐれもご注意を。

最後にもうひとつ。

マレーシア人いわく、ドリアンはデートで食べることはあまりないそうだ。市場で買って家で食べるのが一般的だという。「手がベタベタになって、口の周りにドリアンがつくのが恥ずかしい」とリムさん。またジャンナさんいわく「もし開けるのが下手だったら、かっこわるいから」とのこと。

あのトゲトゲのドリアンを素手でスマートに開けることを求められるなんて。なんともドリアン王国らしいお話しで楽しい。

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今まで食べたドリアンのなかでNo.1は、ボルネオ島・サラワク州のマイケルさんの家で食べたもの。庭で育ったカンポンドリアンで、サイズは小さめ。それなのに、味は濃厚、とろっとした食感。最高だった。

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