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煮干しが好き。

大人になってから、おせちをおいしいと思うようになった。

縁起をかついだ料理というのは、この世はそんなに甘くないと感じている大人の心をときめかせるし、昆布巻やお煮しめの醤油系と栗きんとんや伊達巻きの甘い味を交互に食べれば、まるでお口直しのエンドレス。そして、どれもお酒に合う。

なかでも最近めっちゃ好きなのが、田作り。
昔は食べてふーん(今風に言えば既食スルーか)だったのに、今では作ったそばからつまんでしまうほどぞっこん。お正月以外でも食べたい。

なぜこんなに変わったかというと、
マレーシアで煮干しのおいしさに目覚めたから。

マレーシアでは、料理に煮干し=小魚(イカンビリスikan bilis)をよく使う。だしでも使うし、料理のトッピングにも使う。それもかなりの主役級。つまり、万能ねぎのような「無いより合ったほうがいいね」ではなく、おにぎりの海苔のように「これがなきゃ始まらん!」という存在なのだ。

たとえば、マレーシアの国民食である「ナシレマッNasi Lemak」。ココナッツミルクで炊いたご飯に、サンバル(甘辛の唐辛子ソース)を混ぜて食べる料理で、きゅうり、ゆで卵、ピーナッツ、そしてイカンビリスといったシンプルなおかずが付いている。それぞれによい仕事をしているのだけど、とりわけイカンビリスの効果は絶大。しっかりとした塩気はご飯の甘みを引き立たせ、魚のうま味はサンバルの辛さに深いコクを加える。

また「パンミーPan Mee」という麺は、素揚げのイカンビリスが具になっている。カリッとした食感と香ばしさ。弾力のある麺をかみしめるたびにそれらが口の中にぶわっと広がり、あぁたまらん。パンミーとイカンビリスは、寿司とわさびぐらい密接な関係だと思う。

ほかにも、揚げピーナッツとあえたおやつ、ソーセージと炒めてスイートチリソースで味つけしたおつまみでもイカンビリスは大活躍。素揚げにすればカリカリ食感とほどよい塩気で、やめられないとまらないスナックだ。

ちなみに、日本の煮干しと違って、イカンビリスは加工の時点で頭とはらわたが取り除かれている。なので、苦味はゼロ。長さ2センチぐらいの小魚なのに、ひとつひとつ丁寧に開いてあり、ペラペラな薄さも特徴だ。だから食感がいい。

むかしね、おばあちゃんがよくだご汁をよく作ってくれた。あのころは、だしを取った煮干しがそのまんま入っているのを見ると、おいおい煮干しかよ、とつれない態度をとっていた。ごめん。肩身の狭い思いをさせてごめん。わたし、大人になったらめっちゃ煮干し好きになるからね。

今年の田作り、なんと砂糖を入れ忘れてしまったのだけど、これはこれでおいしい。来年もこのレシピでもいいな、と考え中。

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お年賀に月餅。新宿伊勢丹の地下にあるいつもの店で。いつか、じぶんの名前の型を作ってもらって、オリジナル月餅を作りたい。

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