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スクールカーストは大人になっても続く④

つづき。


社会人のおとうふ(グランドスタッフ)


グランドスタッフ。
それは空港でチェックインをしたりゲートで飛行機に乗るお客様をお見送りしたりする仕事だ。
その職場は女性だらけの職場だった。
大学で消失するはずのカーストがそこには存在した。

まずは雇用体系。
会社の複雑な雇用体系があるが、分かりやすく簡単に話すと正社員と契約社員の違いのカーストがある。
そして次に、出身大学のマウント。
そして全員同期であるのに、入社した月が早い順にカーストが決まって行く。
契約社員で二流大学出身の6月入社の私は、まぁまぁカーストの下の方を徘徊していた。
そしてモチベーションの低さもあり、気怠いキャラクターで知られていた。

2年目のある日、お金の締め作業を早目に終える事が出来、隙間時間に後輩とトイレ休憩をして水分補給をした。
そこに、意地悪で有名なお局①が通りかかって私達を二度見した。
5分後、お局①と仲の良いお局②からアナウンスで呼び出された。
お局②から「なぜサボっていたのか?」と尋問を受けた。
お局①がお局②に何か伝えたのだろう。

自身の仕事を20分早目に終えた為、次の仕事までの時間を束の間に休息にあてる事を「サボる」と言うのが果たして正しい表現なのかは未だに納得が出来ていない。
ましてや平日の21時。
出発予定の飛行機は全て出発し、残りの仕事はゴミ捨てや車椅子のメンテナンスであり、人員は十分に足りていた。
それまで4時間立ちっぱなしで仕事をしていた人間は水分補給もしてはいけないのか。
言葉を選びながら事情を説明する。
このお局グループは敵に回してはいけない階級にいる人間だった為、何を話しても無駄だった。

「大豆ちゃん、残念。がっかりだよ。」

と言われ解放された。
つまり、女性の職場カーストの一軍にいたお局グループから「残念」レッテルを貼られ三軍下部へと落とされた。

私は次の週から、やけに先輩からの当たりが強いと感じながらもいつも通り仕事をした。
その次の週の昇格試験には、筆記試験と実技試験は基準に達していたのに私だけ不合格となった。
理由は数ヶ月前にあげたレポートの事象が大きいから、と言う理由だった。
直属の上司も昇格試験に過去のレポートを加味する特別対応に頭を悩ませていた。
翌週から私はスカーフを巻くと涙が出る様になり、その翌週には職場の最寄駅で電車から降りる事も出来なくなり、ついには欠勤する様になった。
そして翌年、お局グループから逃げる様に私は退職した。


その時の話はこちら。



社会人のおとうふ(クリニック勤務)

前職から逃げる様に転職した先は、都内にある美容クリニックだった。
受付をやりつつ医療事務もする。
またもや女の職場に飛び込んでしまった。
ここでのカーストは分かりやすい。
まず、採用は見た目だ。
美肌・痩身・美容整形を売りにしているクリニックなので、肌が綺麗な人・痩せている人・目鼻立ちが整った人ばかりだった。
そして職業カーストもある。
医者→看護師→受付→看護助手
とピラミッドがあり、その中を見た目や勝ち気の強さで下剋上されて行く。
カースト上部にいる医師に気に入られたら安泰であるが、嫌われてしまったら地獄の日々となる。

そう、それはグランドスタッフの時と同じ構図であった。
王様の様な医師にドリップコーヒーを入れ、気の強い看護師さんを立ててつつ、受付内では仕事を完璧にこなす。
一軍に嫌われなければ私は安泰だ。

そう思っていたのも束の間、今度は受付内の同期から
「大豆さんがコーヒーを入れたり先生の個人的な買い物したり、やらなくて良い事まですると私達までやらなければいけなくなるからやめて欲しい。」
とクレームが入った。
彼女達の言い分も分からなくはない。
カーストがどうとか言っていたが、そこに注意をして生きていても出る杭は打たれるのだ。
仲良しグループでつるむ女子校の様な雰囲気の職場にうんざりし、私は転職を決意し半年後にやめた。



社会人のおとうふ(CA)

ここでやっと現在のおとうふである。
今は楽しく働いているが、最初の1年は泣きながら仕事をしていた。
この職場のカーストは完全に上下関係であった。
入社順に偉い。社員番号順に偉い。
私の年齢や社会人としての経験値は一切関係なく、新人として「かわいがり」を受ける。

フライト前に自分の目標を伝えるタイミングを逃すと、その日一日中無視をされた上に、カートで轢かれて涙を流したら「泣けば良いと思ってるの?」と詰め寄られる。
何もしていなくても、一番下っぱというだけで標的にされて集団かわいがりに遭う。
先輩が貰ったクレームを押し付けられて、代わりにレポートをあげた事もある。

入社をして8年目になると流石にかわいがりを受ける機会も減るが、かわいがりが得意な先輩は沢山いるので油断をしていると流れ弾に当たる事もある。

4月のフライトで、珍しく大先輩の方々と一緒にフライトをした。
その中に、昔こてんぱんにかわいがられた先輩がおり、私はその人の事を魔女と呼んでいた。
そこにもう一人、仕事をきっちりやりたがる少し細かい先輩がいた。はりきりさんと呼んでいた。
その他に、魔女やはりきりさんと同じ位の社番の貫禄のあるぽっちゃり先輩がいた。
そして私と後輩。
何か起こりそうな予感と、自分が標的にならない様に願いながら長い一日が始まった。

私の嫌な予感は意外な方向で進んだ。
魔女がはりきりさんにブチ切れ、ぽっちゃり先輩や私を捕まえてははりきりさんの悪口を言うのだ。

「使えない」
「目が合わない」
「無視された」
「コミュニケーションが取れない」

その様な言葉は聞いていて気持ちが良いものではなく、いつはりきりさんの耳に入るかも分からない。
けれど魔女に逆らうといつ私にかわいがりの矛先が変わるか分からないので慎重に進めなくてはならない。
私が言葉に詰まっていると、ぽっちゃりが言った。

「きっと頭が悪いんですよ。理解能力がないって言うんですか?」
「ガツンと伝えないと分からないタイプの人ですよ。」

吐き気がした。
運良くお客様からの呼び出しボタンが鳴った為、悪口井戸端会議から離脱した。

フライトが落ち着いた頃、ギャレーからはりきりさんが涙目で出て来た。
魔女に何か言われたのだろう。
「大丈夫ですか?」
と声を掛けると、怯えながら
「私って…意地悪かな?」
と私に質問して来た。
何度か一緒にフライトをしているが、こんな弱気なはりきりさんを見たのは初めてだった。
正直今までは苦手だったが、こんな姿を見てしまうと人間味が出て来て一気に親近感が湧いた。
過去に魔女にこてんぱんにされた話や、今日辛い時に助けてあげられなく後悔している事を伝えた。
その後ははりきりさんはひかえめさんに変身し、魔女がリーダーとなって代わり表面上は穏やかに終わった。

その日、私はずっともやもやした気持ちでいっぱいだった。



どこにでも横行するカースト

大人になったら消滅すると思っていたスクールカースト。
実際は職場にもプライベートにも存在している。
勿論、秩序あるこのnote界であってもないとは否定出来ないと思う。

いくつになっても、職場だろうと仲良しグループだろうと、一人の人間を吊し上げてネガティブな言葉を羅列したらそれはかわいがりなのだ。
魔女の様に、本人にいつ伝わるか分からない所で軽薄な発言をするべきではない。

なぜなら私達は、もう無垢で残酷な小学生ではないからである。
常識のある残酷な生き物だからこそ、発言や行動には責任を持ちたいものである。


終わり。

(のろまな亀のようなペースでの更新を見守ってくださり、ありがとうございました。)

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