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映画感想 ザリガニの鳴くところ

2020年12月1日~2021年11月30日までの一年間に読んだ本の中から自分のベスト10を選んで、昨年の12月に記事にしたのがこちら

今年読んだ本156冊から、私のベスト10を発表してみる|おとぼけ男爵|note

その中でナンバーワンに選んだ作品が、
ディーリア・オーエンズの「ザリガニの鳴くところ」でした。

その作品が映画になったということで、観に行ってまいりました。
ネタバレ、あらすじありますので、ご注意ください。

ストーリーは、
「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯で暮らすカイア。暴力的な父の元から母や兄弟は逃げてしまいたったひとりで育った。その父親すらいなくなり、カイアは一人貝を獲って売ることで生活した。学校にも行かず、湿地の自然から生きる術を学び一人で生き抜いているカイアを、町の人たちは「湿地の娘」と言って見下し、疎外していた。青年テイトだけが、カイアに文字を教え、心を通わせてくれる存在だった。だが、テイトは大学に行き、カイアと離れ離れになってしまう。
町の有力者の息子チェイスはカイアに興味を持ち近づくのだが……
チェイスが湿地帯で変死体で見つかり、カイアは容疑者となり裁判にかけられる。カイアに不利な証拠品や目撃者が見つかるが、カイアは断固として無実を主張した。
チェイスは殺されたのか? それとも事故か?
カイアを野蛮人のように思い見下す町の人たちが陪審員である裁判にカイアは勝てるのか?

原作は本当に面白くて、湿地の自然の素晴らしい描写や、カイアに対する街の人々の差別意識、差別意識が裁判に影響を与えるのか否かという法廷劇、そして驚きの真実。
長い小説だったけれど、とても面白くて一気読みでした。

映画は原作に忠実に描かれていました。
特に、湿地の映像が素晴らしかったです。
小説だけではイメージしきれなかった湿地の自然の美しさや広大さ、迫力が映像として見られるので、このイメージを持ちながらもう一度小説を読みなおしたい気持ちになりました。

ただ、小説で細かく描かれていた人の心情といったものは、俳優の演技だけでは表しきることは難しかったですね。
それと、原作では「詩」が印象的に使われていたのですが、そういった部分は映画では味わうことはできませんでした。
でも、丁寧に作られた映画で、音楽も美しく見ごたえがありました。

湿地の中で生きるカイアの姿は美しい野生動物のようでした。
幼いころからカイアに寄り添っていたテイトが、カイアを愛していたのは間違いないと思います。でも、そんなカイアをテイトが湿地から連れ出すことができないと感じるのは、そこでしか生きられない野生動物をそっとしておきたい気持ちに近いものなのでしょう。
一方で、チェイスがカイアを口説こうとするのは、美しい野生動物を狩り、見せびらかしたい人間のようであるように感じられました。チェイスがカイアを愛していたようには思えませんが、チェイスは自分の強い支配欲を愛だと勘違いしていたのかもしれません。
美しい自然と、人間の営みと愛が感じられる美しい作品でした。
人間にだって、動物としての自己防衛本能があってもおかしくない……
そんな結末は、小説の方が強い衝撃を感じましたが、中身が違うわけではありません。詳しい説明を省いてソフトに余韻を残した表現になっていたから、そう感じたのだと思います。あえて、そう表現したのだと思います。
それによって、最後まで美しい映画となっていたように思います。

驚いたことに、これ近所の映画館では上演していなかったのです。
良い作品なのに、話題になっていないせいでしょうか。
少し遠方のシネコンに足を運んだのですが、シネコン自体は混雑しているのに、この映画は観客が少なく、ゆったり鑑賞できました。
ゆったり鑑賞できるのは嬉しいのですが……
良い映画なのに、もったいないなあ……と思うばかりです。

でも、おすすめの映画です。

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