読書感想文 笑うマトリョーシカ
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 笑うマトリョーシカ
作者 早見和真
出版社 文藝春秋
あらすじ
愛媛松山の進学校福音学園で出会った、清家一郎、鈴木俊哉、佐々木光一。将来政治家になりたいという清家は生徒会長に立候補する。そんな清家を応援したのは、鈴木と佐々木だった。
鈴木をブレーンとして清家は生徒会長になり、充実した高校生活を過ごす。
早稲田に進学した清家、東大に進学した鈴木、愛媛大の佐々木と進学後三人の関りは薄くなる。
清家には特殊な魅力があった。まわりの人間が「彼をどうにかしたい」と所有欲を感じる魅力だ。鈴木もその魅力にはまった一人だ。そして、清家の恋人美和子も。鈴木は清家と美和子を引き離したいが……
地元の政治家武智との出会いで清家は政治の道へと進み鈴木は秘書として彼を支える事を決めた。清家は事故死した武智の地盤を受け継ぎ代議士となる。清家27才の時だった。
それから人気若手政治家として出世を果たした清家は官房長官となった。その傍には、秘書として清家を支えてきた鈴木がいた。
そんな中、清家の自伝「悲願」について女性記者道上が取材に来る。道上は清家が傀儡で、誰かに操られているのではないかと思うが……
感想
官房長官になった清家と支え続けた秘書鈴木。そんなシーンから始まり自叙伝「悲願」について女性記者が取材に来る。そして、清家の大学時代の卒論が出てくる。それは、ヒットラーを操ったといわれる人物ハヌッセンについての卒論だった。
政治家となった人物がヒットラーに対してどんな考えを持っていたのか?ヒットラーとハヌッセンの間柄をどう考えていたのか?読者にそんな疑問を抱かせながら、物語は高校時代の清家と鈴木の話になり、「悲願」の中身に触れながら進んで行く。
男同士の友情物語、立身出世物語と思いきや、そこには、美魔女である清家の母親浩子、うさんくささのある清家の恋人美和子が絡みながら、ミステリーの要素を持ち始めていく。
いや、ぐいぐい引き込まれましたね。
巧みな作品でした。面白かった。
政治家というものが、誰かの操り人形だったら……でも、現実に○○チルドレンなんて政治家なんてまさに党の操り人形だったように思うし、とてもリアルに感じられて面白かった。
こんな政治家、結構いるんじゃないだろうか?
人を操る魔性の女。
周りの人間を自分の意のままに操る、魔性の美女ってちょっとなってみたいなあ。なんて、魅力的な存在でしょう。
人間が何を目的に生きるのか? 人間の生きがいとはなにか?
周りの人間の影響を受けながら変化していくことは、自分自身じゃないのか? 本当の自分とは何か?
誰かの力になって生きることと、誰かを操ることはどう違うのか?
自分自身の力とは何なのか?
ホンモノとは? ニセモノとは?
読後様々な、感情が沸き起こって色々考えさせられました。
エンタメ要素もふんだんで、とても面白い作品でしたね。
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