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「秘すれば赤き、花が咲く」②

〜そこは薔薇の園、代わる代わる訪れる、美女たちとの出会い〜
「秘すれば赤き、花が咲く」

資産家の両親の事故から1年が経つ…。
病弱で屋敷から出ない19歳の青年・藤綱 誠は日がな1日、庭の薔薇を眺めて過ごしていた。

立派な薔薇庭園を一般開放した所、女のお客がちらほら来るようになった。
優しく自然な美しさのマーコ。
セクシーで毒花のような直(なお)。
小柄で小悪魔みたいな、くるみ。
気品のある謎のお嬢様・桜子。

閉じていたつぼみが開き始める…。

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【藤綱 誠(ふじつなまこと)】
引きこもりの資産家の坊ちゃん。19歳。コミュ障で根暗、謙虚で優しい美青年。1年前、父と義母を事故で亡くしてる。

【くるみ】中学3年生。15歳。漫画アニメオタク。悪魔のキャラが好き。いつも黒ワンピース。稀に嬉しいことがあるとピンクのワンピースを着る。
気まぐれな小悪魔ちゃん。

【桜子】謎の女性。20歳くらいに見える、36歳に見えない美しいお嬢様。世間知らず。小銭の計算が致命的に出来ない。

【薔子】
誠の先生にして、初恋の人。そして父の再婚相手。事故死して、もうこの世にはいない…はず。

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〜くるみエピソード①〜

【くるみ】
「こんにちは〜。入っていいの?ここ」

【藤綱 誠】
「こんにちは〜。入園料50円です…って中学生!?」

【くるみ】
「うん?中学生だけど何か?」

【藤綱 誠】
「いや…、えーと学校は?」

【くるみ】
「おじさん、そういう事を深く掘り下げるのは野暮だよ。野暮。」

【藤綱 誠】
「え、いやおじさんって💦僕まだ19歳💦」

【くるみ】
「だって野暮な事聞いてくるんだもん!
そういう遠慮ない人は、若くてかっこいいお兄さんだとしても、くるみ的にはおじさんなんだよー。
深刻な話を聞いて受け止めたり、責任持ってくれるならいいけど、興味本位で聞いてくるんだもん!」

【藤綱 誠】
「そ、そうかも…。ごめんね。くるみちゃん。僕も不登校の時、それを聞かれるのは嫌だったの思い出したよ。…僕もそんなふうに強く大人に言い返したかったな」

【くるみ】
「おじさん…。…おじさんはヴァンパイアの漫画観たことある?」

【藤綱 誠】
「?唐突になんでヴァンパイア漫画?観たことないかも」

【くるみ】
「じゃあ、ヴァンパイアに血を吸われたことある?」

【藤綱 誠】
「いやいや、ないけど💦」

【くるみ】
「そうなんだ。残念。ヴァンパイアに首から血を吸われて、痛みに悶えてたら、セクシーで似合いそうと思ったのにな〜」

【藤綱 誠】
「へ?一体何の話ですか?💦」

【くるみ】
「じゃあさ、じゃあさ、このお屋敷に悪魔を呼ぶ黒魔術を使うための秘密の部屋とかないの?」

【藤綱 誠】
「はい?💦なぜそうなるの?魔術とか普通の家にないでしょ?」

【くるみ】
「そうなんだー。つまんないの。こんな薔薇の咲き乱れる庭と立派な豪邸…。これでファンタジーな要素がないとか…がっかりだよ!」

【藤綱 誠】
「はい??」

【くるみ】
「私、ダークファンタジー系の漫画やアニメが好きなの。
そういう作品に出てきそうな場所だから、つい妄想膨らんだの。
実際ないと言われて残念すぎる。
嘘でも、『黒魔術で召喚した女悪魔をメイドにしてるよ』とか言えばいいのに〜。
…おじさんノリ悪いな」

【藤綱 誠】
「は、はあ…」

【くるみ】
「まあ、オタ友に自慢するために薔薇園スマホで撮りまくろ〜。
じゃ、またね。おじさん」

【藤綱 誠】
(…今の若い子、元気だなぁ…💦)

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〜桜子エピソード①〜

【藤綱 誠】
「入園料50円です」

【桜子】
「……。……、えっと、はい」

【藤綱 誠】
「それ1万円ですよ」

【桜子】
「……え」

【藤綱 誠】
「小銭ないんですか?」

【桜子】
「…はいこれ」

【藤綱 誠】
「それ10円です」

【桜子】
「え…」

【藤綱 誠】
「いえ、それを5枚くれればいいですよ」

【桜子】
「……💦」

【藤綱 誠】
「どうしました?」

【桜子】
「5枚ありません。どういたしましょう」

【藤綱 誠】
「うーん。少しお財布をお借りしますね。あ、100円玉ありますね。もらいます。50円お渡しします」

【桜子】
「…ぇ、でも入園料…50円…」

【藤綱 誠】
「え。入園料50円。
大丈夫それは今もらいましたよ」

【桜子】
「……綺麗な庭。よく手入れされた薔薇の花…」

【藤綱 誠】
「なんだろう。今までのお客様の中で1番バラが似合うな。ああ、可愛い人だなあ…」

【藤綱 誠】
(その時だった。また薔薇の庭に薔子先生がまるで陽炎のように現れた…)

【薔子】
《マコトくん…マコトくん…》

【藤綱 誠】
(あ、しょ、薔子先生!
ど、どうしよう。お客は来てるのに。
ああ、え。どうしたら…?)

【桜子】
「大丈夫ですか。しっかりなさって」

【ナレーション】
(そう言いながら、桜子は崩れ落ちそうな誠を抱きしめて支えると、背中をさすってくる)

【薔子】
《…ちっ》

【藤綱 誠】
(ひっ、ショウコ先生怒ってる!💦)

【藤綱 誠】
「だっ、大丈夫です。大丈夫ですから離れてください」

【桜子】
「…はい」

【藤綱 誠】
(薔子さん…もういなくなった。よかった…)

【桜子】
「……」

【藤綱 誠】
「あ、あの、お名前聞かせてもらっていいですか?」

【桜子】
「桜子…」

【藤綱 誠】
「桜子さん。今日は楽しんでいってくださいね」

【桜子】
「はい…」

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