歌詞の細部に注目したら、ぶん殴られた3曲【名曲ディグ】
なんかグッとくる曲は、実は歌詞の細部にヒミツがあるのでは?
「この曲の、この歌詞、この部分がいいんだよな」というのはきわめて個人的なものだけれど、「こりゃやられましたな」って思ったものを3曲。
地獄でなぜ悪い
実は歌詞をしっかり意識しないまま聞いていたのだけれど、ほんに今さら、
冒頭のこの1行に殴られた。
たいそう楽しげに楽器が打ち鳴らされるイントロから始まるこの歌、最初の1行でしっかり奈落に落ち、地獄に連れてゆかれる。
特に病室という初っ端のワードが効いている。
仮に「夜が心をそろそろ蝕む」という文章に充てる言葉を考えるとして、とてもシンプルにわかりやすいのは、「孤独」とかあるいは「絶望」かもしれない。
だけど星野源がいうならやっぱり病室で、それでつまり「孤独」も「絶望」も説明される。
ダラダラ言わずに最初に病室っていうから、はっとする。
なんだったら私は、病室というこの1語にぶん殴られた。
My Hero
2年ほど前、スーパーのレジに並んでいた時の話。
小学生の男の子2人がお菓子を買おうとしていたのだが、どうやらお金が足らなかったようで、レジ係の女の人に「お菓子を減らそうか」と声をかけられていた。
彼らは多分「大変なことになっちゃった」と子供ながらに動揺したのだろう、下を向いて固まっていた。
後ろに並んで待ってた私はこういうとき、手助けをしてやりたいのだが、余計なことをごちゃごちゃ考える質で、なんか私も固まっていた。
固まる子、固まる大人、いたずらにながれる時間。
そこに少し離れたサッカー台にいたおじさんが、レジに向かってやってきた。
「僕が払いますよー!」
彼は明るくそう言って、さっと払って、店を出て行った。子らの知り合いでもなんでもなかったらしい、普通のおじさん。
私、そのさっぱりした爽やかさに、えらく心を打たれた。
ごちゃごちゃ考えずに、さっと手を貸したらいい。
あのひとはものすごくかっこよかった。
スーパーで見たおじさんの感動を誰かに話そうとすると、うまく表現できずぐだぐだになって終わる。悔しい。
私の言葉にできない思いが、Foo FightersのMy Heroを聞くと、He's ordinary で代弁される。
この曲は好きでよく聞いているが、そのたび、もう会うことはないあのひとを思い出し、「お元気で・・・」と心に思う。
地元の朝
ある絶望に接していた男が、地元に帰り、両親に会いにいくのだが・・・という、8分を超える大作。
歌詞全文を読むだけでも、十分読み応えのある短編として成立する。
曲の冒頭部分の歌詞。
育った町や親の家の前という表現が秀逸すぎる。
生まれ故郷でなく育った町といい、自分の実家と言わずに親の家という。この主人公にとって、そこはもう自分の町、自分の家ということが憚られるようなきもちのする場所。
主人公の所在なさ、そして孤独な心情が際立つ。
この後も、人生なんて人情泥棒とか立派な大人になりたいなとか胸を衝くような歌詞が続き、中盤までに紡がれる言葉たちがジャブのよう。これが効きに効きまくり、ブリッジから大ラスにかけてのカタルシスが致命的だ。
いつ聞いてもどうやったって涙腺崩壊する。
(バスとか電車では聞かないようにしている)
「地元の朝」はいつまでも遺ってほしい逸品で、よければこれを機に、歌詞も見ながら聞いてもらえたらと思う。
神は細部に宿る。
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