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自由俳句

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2021年11月の記事一覧

自由俳句 #19 パラジウム

自由俳句 #19 パラジウム

 パラジウム塩は、電極や有機反応の触媒として使用されます。試薬は、数グラムでかなりの値段したような気がしました。実験の予算が出て、高い外套を買うという心理を想像しました。

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   #19  パラジウム

木枯のやう牛運ぶベクトルは

シロイルカ閉じ込め冬の海無限

数列や子猫の毛並みはえそろふ

人の語を鸚鵡返しす北風《きた》の中

パラジウムは匙三万とコート買ふ

曲者だ迷彩柄の外套は

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#18 左拳

#18 左拳

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   #18 左拳

力なき左拳の荒れにけり

一トンの冬水蛇口より出づる

洗濯前の冬服エコバックの下に

足突つ込む毛布や人魚座りして

冬の蝿から文脈を追ひかける

笑笑とマスク置かるる卓の上

ハロウインや猫がかむりし紙袋

冬布団へ押しよす古新聞怒涛

十一月五日母校の記事古りぬ

みかん剥く塗料のつきし爪の端

ぎんが

#17 霜焼

 久しぶりに落ち着いて俳句を書いた。用意していた短冊の枚数がぴったりだった。

 表現が配慮として不良や反骨の形をとることがある。それは、心を伝える技術であって反抗の態度ではないのだと気がついた。しばらくは、写生へ徹しようと思う。

 昨日今日の新作十句。

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   #17 霜焼

フリースの毛玉こんがらがつて冬

降霜や星の数ほど弱音吐く

信号まで尾花が枯れてゆく速度

おでんの汁染みゐ

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自由俳句 #16 粘菌

自由俳句 #16 粘菌

粘菌を探せし母と小春下

 少し早いですが、秋と冬の句を。表題の句は、現実味があるかわかりません。変形菌を一度は見てみたいです。

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   #16  粘菌

裏声の裏の爛漫読書の秋

とちの実の煎餅いふを貰ひけり

絆創膏の指が木の葉のお金拾ふ

革ベルト毛皮とともに吊られゐし

盆栽の鉢に枯れ葉の二枚寄す

きつつきの話膨らみ紅茶の香

撒き散らす副流煙を野分せよ

粘菌を探せし母と小春下

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自由俳句 #15 秋の陽

自由俳句 #15 秋の陽

柚子五つ袋の皺を透かしたれば

薄手の袋を透かせば摘んだばかりの柚子が入っています。もうすぐ立冬。秋もわずかです。

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   ♯15 秋の陽

紅茶から庭にコゲラの話へと

夕食の前のポテチとみかんの皮

みそ汁や白菜のほか輪ぎりして

回送の幼稚園バス柿渡る

選挙来て校庭の葉の二三枚

看板の文字はつきりと刈田行く

煙突から煙今年の豆腐はどう

小銭ばかりの財布を椅子に行く秋ぞ

ひと

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