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検察庁法改正案に関する備忘録

SNSで「#検察庁法改正案に抗議します」がムーブメントになっていますが、そもそもの検察庁法、そして検察庁法改正案についてイマイチ分かっていなかったので以下にざっくりまとめます。

検察庁法について

Wikipediaによれば、「検察庁法(けんさつちょうほう)は、検察庁の組織と検察官の任命の手続について定めた日本の法律。法令番号は昭和22年法律第61号、1947年(昭和22年)4月16日に公布された。所管官庁は、法務省である。」とあります。28条から構成されており、検察庁・検察官・管轄・検事総長等の権限・法務大臣の指揮権などが定められています。今回のムーブメントでピックアップされている「定年」については第22条にて定められています。また、検察庁は法務大臣の指揮下にある組織でもあるため、三権分立における行政府に属する組織・機能にあたります。この点、調べるまでは立法府に属すると思っていたので、認識が改まりました。

ちなみに、なぜこのような認識(検察庁は立法府に属する)をこれまで持っていたかというと、参照記事の文言を引用しますが「日本の起訴後有罪率は99.9%。起訴されればほぼ有罪です。つまり、刑事弁護の被告人にとって、無罪を取れるかどうかよりも遥かに重要なのは起訴されるかどうかです。(中略) このような状況において、刑事司法において裁判所は厳格に検察から独立しているとはとても言えません。つまり、実質的に検察は司法権の一部を担っているのです。」というのが理由です。

検察は独立権を与えられているために、その暴走を回避すべく、民主主義にて選出された内閣(法務大臣)が包括的な指揮権を持ち、チェックする機能を持つことになっています。なお、この「法務大臣の指揮権」が実際に発動されたのは過去1度のみで、1954年に造船疑獄(ぞうせんぎごく)に関連して発動されたのみになります。ちなみに、このときは被告側(政治家)を救うような形になってしまったので、正当性・妥当性については今でも議論の余地がある一件として扱われています。

ただ、いずれにせよ上記の通り行政府には属しているものの、実質的には司法権に多分に影響をもたらしているため、三権分立の観点から、内閣と検察庁は同じ行政府とはいえ独立性を持たせておかなければなりません。もし内閣が検察を思いのままに動かすことができれば、実質的に司法権・立法府を動かすことになる懸念があるためです。

検察庁法改正案について

検察庁法改正案は、国家公務員法等の一部を改正する法律案の第4条(検察庁法の一部改正)になります。今回、国家公務員法を改正し、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げられる中で、束ねでこの検察庁法の改正案も盛り込まれている形になります。

1)検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる。

2)検事長、検事正などの幹部は63歳で役職を降り、平の検事に戻る。

3)ただし内閣が必要と認めた場合、役職を続けることができる。

上記は参照記事の抜粋です。

議論すべき点

以上を踏まえると、本件について議論すべき点としては「内閣が、検察庁の現状の独立性を、この改正案で妨げてしまうのではないか」ということが挙げられます。国家公務員と検察庁は法律上異なる組織として定義・明文化されているので、国家公務員の定年を引き上げる→検察庁においても適用する、というのは拙速です。

この点がきちんと言語化された上で議論されているのかどうか・・・

少なくともSNS・テレビを見る限りはそうは思えないですね。


参照記事

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%BA%81%E6%B3%95

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200512-00218866-hbolz-soci&p=1

https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20200512-00178147/