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【掌編小説】ふかふか植物

 とある植物園では、新しい植物が開発されました。
 その名も『ふかふか植物』です。
 ふかふか植物の葉っぱはとても大きく、ぽよんぽよんのふかふかです。
 植物園の研究員さんがふかふか値を測定するためにふかふか植物に座ってみると、効果ばつぐん。その後24時間連続で働き続けました。
 次に、研究員さんはふかふか植物を枕にして眠る実験をしました。すると、やっぱり効果ばつぐん。連続48時間も眠ってしまったのです。
「すごいぞ、ふかふか植物といると体がぐんぐん元気になるぞ!」
 どうやら、光合成と一緒にすごくいい匂いを出して研究員さんをいい気持ちにさせているようでした。
「ありがとう、ふかふか植物さん」
『どういたしまして、研究員さん』
 研究員さんの毎日は幸せでした。
 毎日、疲れた表情を浮かべていた研究員さんですが、今では笑顔以外は見られません。以前は小さな声でで少ししか喋らなかった研究員さんですが、今では明るく元気に喋ります。
 1人でいたって喋ります。
 元気の理由はもちろんふかふか植物です。
 研究員さんは自宅でもふかふか植物と暮らしています。一緒に食事をとって、一緒にお風呂に入って、一緒にお喋りをして、一緒に眠ります。ふかふか植物はひとりぼっちだった研究員さんにとって最愛のものになっていました。
 最近では研究員さんにも芽が出てきました。
 来週には花が咲くらしいです。
 来年には子どもが生まれる予定です。
 ふかふか植物は、本日発売されて一周年を迎えます。

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