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【掌編小説】おにごっこ
いや、そんな畏まった感じ出さんといてや。村の儀式とか言ったってそんな怖い風習とかやないから。魔除けみたいなもんよ。婆ちゃんも笑ってたやん? まあ、あの笑い方は癖やからさ。
子供の頃、鬼ごっこってやったやろ? まあ、色鬼でもケイドロでもなんでもいいわ。鬼がいる遊び。うちの村ではな、遊び終わると鬼はその子どもに一匹取り憑くって言われとるんよ。鬼役を皆で演るんやから一匹くらい宿ったってお話としてはおかしくないやろ?
もちろん子どもが演じて宿った鬼やから大した悪さはせん。でも、沢山沢山遊んで沢山沢山持ち帰った鬼は次第に悪さを企みだすんや。
ってなことで、何年かに一度、呼び出して連れ帰ってしまった鬼を追い出すために儀式をするんよ。
何をするかって?
『かくれんぼ』や。
まあ、こっちは遊びの『かくれんぼ』とは違うけどな。
実際には何をするかと言うと、家の中で引き篭もっとくだけ。鬼役もおらん。大人は最初に祝詞みたいなことを唱えるけどな。
祝詞で外に放り出された鬼は依り代の子どもを探して村を周るんやと。村中の子どもに憑いてた鬼やからそりゃあ大量やで! まあ、一日したらどっかの山の根城に帰るらしいけどな。
だから、明日は一日中ゲーム三昧やな。
いやあ、お前泊めに呼んどいて本当、良かったわ。
ああ、言っとくけど、窓には近づくなよ?
鬼は鬼を呼ぶからな。
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