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掌編小説

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#動物

【掌編小説】飼い主に似た瞳

 赤の他人の家に入ったことはあるかい?  私はあるよ。それも頻繁に。  別に犯罪じゃないよ、バイト。  学生の頃、親戚の電気工事士のところでバイトをしてたんだ。  エアコンを取り付ける手伝い。  夏は忙しくて猫の手も借りたいほどに大変なんだ。  物を運んだり、配管を上手く曲げたりするのに一人だと時間がかかるしね。  かなり割のいいバイトだったよ。その分、体力的にきついけど。  まあ、そんなバイトをしていたもんだから、いろんな安アパートにエアコンを取り付けに入ったんだ。  ああ

【掌編小説】美少年と唾

 その少年は美しかった。  白く薄い肌が弱々しく見えるくせに活発でよく笑う男の子だ。  僕の家の近くに引っ越してきたその家族は、全員少年と同様に美しく、上品で大きな家に住んでいた。貿易商を営んでいる主人は外国の人で使用人から旦那様と呼ばれていた。そう、使用人がいたのだ。  しかし、気さくで近所と言うこともあってか、家に招待されることもあった。私服でお邪魔するのは気が引けたから、訪ねるときはいつも学校の制服で行った。そこが、良かったらしい。真面目な学生だと評価を受けて、次第に僕