コミティアに初参加してきた話

2022年2月20日、東京ビッグサイト


私は数年前の就活ぶりにそこに訪れた。


目的は日本最大のオリジナル同人誌即売会であるコミティアに参加するため。


正直、私はそれまでだいぶ死んでいた。

数ヶ月、担当編集に見せるネームも一本も描けていなかった。

描けない理由もわからなかった。

その状況を打破しようと、12月上旬に参加の申し込みをしたのだが、それでも描けないという状況がまだ続いていた。


イベント開催が近づく2月初め。


私はようやくコミティア用のネームに取り組んだ。


当初はバスケ部の女の子と、それを見守る皮肉なキャラを出そうと考えていた。


ただ直前になって、陸上の話にした。


今の自分の状態をどうにか漫画に落とし込みたかった。


担当とのごちゃごちゃとか言われた言葉とかも、漫画で消化したかった。


10ページほどでまとめるつもりだったものも最終的に19ページになった。


残り20日間で19ページを文字入れ、コピーまでしなければならないのは、これまでにない危機だった。

毎日ペン入れをして、朝6時に寝て、起きて、また描くというのを繰り返した。

ただ、自由に漫画を描いていい、という機会を持ったことは、精神的にすごく楽だった。


絵とか、話の構成とか、どんなに下手でも、なにも言われないのは、少し悲しいけど、それ以上に創作の楽しさというのを再認識させてくれた。


書き込みも足りないまま当日を迎え、20部刷ったコピー本と小物を抱えて、寝不足の目を擦りながら会場へ向かった。



ビッグサイトに向かう途中の電車でスーツケースも持った人がたくさんいた。

感動した。


ビッグサイトについた。


人がたくさんいた。

感動した。

自分で漫画を描いている人がこんなにたくさんいるんだって思った。


少年誌で描いていきたい自分はここにいる人たちと勝負をしなければいけないと思って武者震いもした。



結果として、描いた漫画は、一冊も捌けなかった。

コピー本で無料配布だったのに、捌けなかったこと自体にはショックを受けた。


コミティア初参加は厳しいと知っていたけど、正直落ち込んでしまった。


でも不思議と、次も参加したいという気持ちにはなっていた。

次はどうしたらいい、とか反省点が色々見えて、次は一冊でも捌いてやると、やる気に満ちた。




話は少し脱線するけど、私は、割と型にハマった漫画を描くのが得意だと思っている。


担当編集に言われたことも全て正直に作品に投影させて、


何ページまでに全てのキャラを出すとか、ひとページに何コマまでとか、どのコマ割りを使うとか、ルールを並べたらキリがないくらい、神経を使って漫画を描いていた。

知らないうちに、自由に描くというのが難しくなっていって、

読者を意識しなくてもいい漫画、って言うのも難しくなって、


なにが楽しかったのか分からなくなってきてた。


コミティアに参加して、参加している人たちがそれぞれ自分の好きなものを詰めたものを持ってきている感じがして、心臓がキュッとなった。


すごいなぁ、素晴らしいなぁと終始感動していた。


あれから1ヶ月が経って、私はまだ新しいネームを切れていない。


でもあの日、コミティアでこのままじゃいけないって感じた感覚は、これからも忘れないと思う。


また次は、とんでもない漫画をちゃんと製本して捌きたい。


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