死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ

内容・感想

 じわじわと不気味さ、不快感を積み上げていくような物語だった。
 物語から浮かび上がってくるのは、生きがいを求めて迷走する若者たちの姿。彼らは心から打ち込める「やりたいこと」が見つけられず、すごい人になりたい、他の人よりも優れた存在でありたいという願望だけが空回りしている。本当は興味が無いのに、社会問題に関心がある人を装ってみたり、何かの団体を立ち上げてみたり、外面を必死で塗り固めている。その姿からは、ただ楽しく生きるという選択が取りにくく、何かを達成することを善とする社会的圧力が感じられる。
 物語の中心人物となる青年はそのような圧力の影響を人一倍強く受けているが、それだけではない異常さを持っている。視野が狭く、考え方が一辺倒。物事を一部の面からしか捉えられない。そんな目を背けたくなるような人物だが、登場人物たちは自分の中に彼と同じ性質が隠れていることを発見する。人間はみんな少なからず醜い面を持っているのだと。

まとめ

 社会の風潮について、また自分がそこにどう適応していくのか。自分の行きかた、考え方、物事の捉え方。色々と考えさせられる作品だった。

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