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私がジュエリーを始めた理由

こんにちは。ジュエリーブランドotayoriの
デザイナーと職人をしております、トウカイリンと申します。

最近、大変ありがたいことにブランドの活動をしていく中で
こんなにもブランドを見てくださっている方がいるんだ…と実感させていただくことがあります。

いつもブランドを見守ってくださっている方、応援してくださっている方に
私がどうしてジュエリーブランドを始めたのか、
そしてそこから現在に至るまでのお話をさせていただこうと思います。

1.作りたいものが作れない日々


ブランドを始める前、私はアクセサリーの会社でデザイナーとして働いていました。
実は、自分がアクセサリーやジュエリーという仕事と出会えたことは必然だったように思っています。
物心ついた時から絵やものを作ることが好きで、美術の高校や大学で才能あふれる友人たちと切磋琢磨して学ぶ中
「自分は立体造形が得意、そして作業が細かければ細かいほど燃える!」
という答えに行き着いたからです。

その後、ジュエリーの専門学校で制作を3年間学びました。
自分の仮説はあっていた!と思うほど、ジュエリー制作にのめり込んだ専門学生時代でした。

そんな学生時代を過ごし、就職。
そこでの私の様子はというと、決められた条件の中で商品をデザイン・開発することは得意で基本的には楽しく働いていたのですが、自由に企画するデザインや提案書はことごとく不採用。
今振り返ると、クオリティや斬新さにこだわりすぎて実現性に欠けていたのだと思います。

商品のデザインやアイディアは毎日のように浮かぶのに、会社が求めているものと相違がありそれらを頭の片隅にしまい込む日々。
少しずつモヤモヤとしたものが溜まりつつも、とにもかくにも生活!働らかねば!と自分の気持ちに蓋をして働き続けていました。

2.「商品と作品は違う」


社内で新しいアクセサリーのコレクションを出すことになり、私の所属していたデザイン部署のデザイナーがそれぞれが企画書を作ることになりました。
商品化の決定権を持つ課長と、各デザイナーがそれぞれの企画書を持ち寄り会議をします。
課長は順番に企画書に目を通し、担当したデザイナーにコメントを残していきます。
ついに私の番がやって来て、ドキドキしながら課長の言葉を待っていました。
「東海林さんね、いつもジュエリーだったら良くなりそうなものを上げてくれるんだけどね…私が思うに、商品と作品は違うんだよね。
その言葉に、衝撃を受けました。

私は作品とばかり向き合って、その先のお客様のことを考えられていなかったのです。
でもそこで「じゃあこれからは自社のお客様目線に立って商品を作ろう」とは、その時の自分はなりませんでした。
数年前、作りたいものを作って心から物作りを楽しんでいた学生時代。
その時の気持ちが、どうしてももう一度欲しい。

人間には3大欲求があると言いますが、私にとって「作る」ということは
それくらい自然で、無いと自分ではなくなってしまうほど大きなものです。
そのため「作りたいものが作れない」というのはくだらない我儘にも感じますが、
私が会社をやめようと思うには充分な理由でした。

「自分が作りたいものは、この会社のお客さんは求めていない。
でも私だから作れるものがあると思うし、世の中に必要な形にして、
それを必要としてくれる人に届けたい

私は3年間勤めた会社を退職しました。


3.「作り方は知っているけど売り方は知らない」


フリーランスで稼いで自立しなくてはと自分を奮い立たせるために、それまで住んでいた千葉の実家を離れ、台東区の入谷に一人暮らしをはじめました。
ジュエリーの外注先が並ぶ御徒町に近く、比較的安いこのエリアは私にうってつけでした。

自分の思いつくままにジュエリーを作ることが出来る。
最初のうちは楽しく過ごしていましたが、すぐにあることに気がつきます。
あれ、作り方は知っているけど売り方は知らない。

自分で作ったオンラインショップもアクセスは無いし
今では月1ほどで出させていただいているPOPUPも、当時はどうすれば出られるのか知りませんでした。
何の計画性もなく会社を辞めてしまったことは、今思うと無謀・若気の至りだったと思います。

とりあえず、ジュエリー作家が出る有名な展示会に応募してみよう!
と出展まではこぎつけましたが、結果は芳しくありませんでした。
向かいのブースのいつも人が絶えない人気なブランドさんを眺めながら、
羨ましいなあ…という思いで見ていました。


4.「デザイナーズビレッジとの出会い」


そんな結果の展示会でしたが出会いもありました。
知り合いの作家さんが出来たり、POPUPに出させていただく機会をいただけるようになったのです。
もちろん最初はそれだけでは生活が出来なかったので、知り合いの作家さんの制作や、販売のお手伝いもさせてもらっていました。

ある日、知り合いのブランドさんのPOPUPの販売をさせてもらっていた時のこと。
お隣でPOPUPをされていた方が話しかけてくださったのです。
「このブランドさんの販売スタッフさんなんですか?」
「いえ、実は普段は私もジュエリーを作っていまして…」
そんな風に答えると、こんなお話をしてくださいました。
デザイナーズビレッジってご存知ですか?
私も数年前そこにいたんですが、とても合っていると思いますよ」

そんな出会いから、私はデザイナーズビレッジ(通称デザビレ)を知り、入居することになります。

5.ブランドのリニューアル


デザビレに入居してからは、自分の世界が一気に変わっていくようでした。
一人で頼れる人もいない中制作を続けていた私にとって、仲間と呼べる存在が初めてできました。
そして「ここに入居しているクリエイターたちは、みんな作るものは違えど世界を今より少し良くしようと思っている仲間なんだ」と感じました。
そんな周りの入居者は、私から見てとても順風満帆そうに見えました。
そんな入居者の様子を見たり、相談したり自問自答する中で

あ、私また商品ばかりでお客さんのことを考えていない。と気がついた出来事がありました。
会社員時代の、課長の言葉が思い出されます。

私はお客さまにどう幸せになっていただきたいのか。
自問自答しながら、時にデザビレのマネージャーである村長とミーティングを重ねながら出した答えが「ブランドコンセプトの見直し・ブランド名の変更」でした。
そこから、今のotayoriとして活動することになったのです。


6.少しずつ実感する成長


そこから少しずつ、お客様に認知していただけるようになったり、
入居時の目標のひとつだった「お取り扱い店舗をつくる」ことが叶い、
蔵前の「木宮商店」さんにotayoriの商品のお取り扱いが決まりました。
そして昨年末に出展した「New Jewelry」という3日間の展示会。
そこで最終日に近くのブースの作家さんから、こんなお声がけをいただきました。
「いつも人が絶えなくて、この3日間ずっといいなーって思っていました」
これは私が初めて展示会に出展した際に、他のブランドさんに対して感じていたことでした。

7.迷った先で見つけた宝物


ところがotayoriとして活動を始めるも、またもや道を見失います。
作りたいアイディアが浮かんでは、「あれ?これってどうオタクに関係あるんだっけ」
やりたいことが見つかっても、「オタクのお客様はこれを必要としていないかもしれないな」
そんな脳内ループで、前に進みたい!というエネルギーはあるのに進む方角を見失う状況。

私は思い切って、連絡が取れるお客様数名に、アンケートを取らせていただきました。
お客様自身のことやお悩み、どうして応援してくださっているのか?等…
どうして応援してくださっているのかなんて聞いてもいいのかなと緊張しつつ、
返ってきたお客様たちからの返答はとても暖かいお言葉や、そして長文で想いを綴ってくださったものまでありました。
本当に暖かく、私の宝物になりました。

8.私だから作れるもの


そこから見えてきた、otayoriと私の強み。
お客さまからいただいたお声によると
“otayoriのジュエリーは、ドア、カーテンなどテーマがあり自分なりの意味がこめやすい”
ということでした。

誕生石や花言葉のように、ジュエリーに意味を持たせる。
そしてモチーフをテーマにしながらも、そのモチーフが主張しすぎることなくジュエリーという形に落とし込む。

これはotayoriになる前から、私が自然とやってきたことでした。
自分が自然とできること、つまり得意なこと、強み。
それをお客様が気がついてくださり、良いと言っていただけることがとても嬉しい出来事でした。

「私だから作れるものがあると思うし、世の中に必要な形にして、
それを必要としてくれる人に届けたい」

会社を辞めるときの想いを、お客様が思い出させてくださいました。
そして気づかせてくださった、私の強み。
これを最大限ブランドに反映させていこう、と決めたのです。

9.デザビレ卒業までにやりたいこと


そんな風に悩みながら進んできたブランドですが、来年また節目を迎えます。
デザビレの卒業です。
デザビレは基本的に最長3年間という期間が決められているので、来年2025年に3月にデザビレを出なくてはなりません。
残り1年を切っている今、デザビレ卒業までの目標を見つめ直しました。
そこで見えたきた答えが、
「展示会をやる」ということです。

それには、会いにきてくださるお客様がいなくてはなりません。

入谷のワンルームで、一人ぼっちでジュエリーを作っていた時からは考えられない目標です。

でもふとした時に実感します。
今は長いアンケートに快く答えてくださるお客様がいる、いつもSNSで見守ってくださっている方がいる、クリエイターの仲間や尊敬する先輩たちもいる。
私とブランドはずっと、人と関わることで成長させてもらいました。

そんな方達に感謝を伝えるべく、単独で展示会をしたい!
そういう目標を、今は掲げています。

この、ずっと自分の中にある物作りに対する溢れるエネルギーを、
どうにかお客様の「嬉しい」という形にして、お届けしたいのです。

そんな目標をかかげた今、私がやることは
展示会を開くためにまずはお客さま1人1人とお会いしていくこと。
1番お気軽にお立ち寄りいただけるポップアップという形で、活動を続けていくつもりです。

ぜひ、少しでも気になっていただけたら、お気軽に遊びに来てください。
これを読んでくださった貴方とお会いできることを、とても楽しみにしています。


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