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エッセー:クリぼっちって概念、廃れたよね

みなさんは12月25日に予定はありますでしょうか?私は特にありません。
坂本龍一『戦場のメリークリスマス』を頑なに『Merry Christmas Mr.Lawrence』と呼び続ける人間、深夜区トウカです。
今回は、クリぼっちという言葉をテーマにインターネットの移り変わりの話をします。

ところで、みなさんはインターネットスラングが大好きですね?私も大好きです。
私がどんな人間なのかを端的に表すと、2ch(現5ch)における古典的な有名コピペ、「ぬるぽ」「ガッ!」に対して「この"ぬるぽ"っていうのは"NullPointerException"っていうエラーメッセージを略したのが元ネタなんだよね」という説明を脳内でするような人間です。
味噌なのは誰に言うわけでもなくネタを回収できたことに対しての優越感を自分の中で確かめているだけ…というところです。つまるところ、相手がいないんです。

そう私は1人でインターネットミームについて考えるだけのモンスター…!ただでさえそんな思考の人間なのにnoteなんて始めたら産まれてしまう、偏屈思想モンスターが…!

こんなことを一昔前にのたまっていたらいくらエッセーが多いサイトといえど袋叩きに遭っていたでしょうね。なんというか、インターネットの雰囲気はかつてより…悪くいえば馴れ合い主義的になって来たように感じます。
悪い言い方を先に出したのは、私はこの変化を拒絶していないという意図を込めて、です。
翻って考えれば大昔のインターネット黎明期はユーザーの数が少数だった分それだけである種の連帯感というかそれだけで"同じ仲間である"という感覚があった(ように見えます、当時を知る人間ではないので正確ではないかもしれませんが現在の視点からすると)のである種馴れ合い主義的なムードがあった筈です。

それと比較すると、私が一昔前と雑多に形容した"匿名掲示板の利用者が増大し、雑談文化が発展したSNS登場以前の時代"殺伐としすぎていたような気がするのです。

そして、その最たる例がこの言葉、「クリぼっち」でしょう。一応この語のニュアンスを説明しますと、「クリスマスなのに家篭ってる奴いる!?いねぇよなぁ!」くらいの意味合いです。
この言葉は10年ほど前に大流行しました。ちょうど私の呼ぶ"一昔前のネット"時代です。この言葉が流行したというのは殺伐としていたその当時のインターネットの空気感を表していると言えるでしょう。
彼らは、抵抗を持っていたのです。ネット上というイケてない奴らがたむろしている場所での傷の舐め合いに対しての抵抗を。正に"反馴れ合い主義"
その気持ちは個人としては理解できなくはありません。自分自身がそうですが、そんなことをしてるとどうしても惨めな感じが…。

まぁ、それは一旦置いておきましょう…!
ここで論じたいのは「"クリぼっち"という言葉の流行り廃りがネットの空気感を表している」という部分です。

クリぼっちという言葉に蔑みのニュアンスが含まれていることは紛れもない事実でしょう。もちろんある種のネタではありますが、あまり聞こえの良い言葉でありません。「クリスマスなのにひとり…クリぼっち」という発想ですからね。
つまり、これが流行していた時代というのはお互いがお互いを下にみたい、馴れ合い主義を嫌悪する時代だったという事が逆説的に説明できるのです。

これはそっくりそのままこの言葉が廃れている現代は馴れ合い主義を受け入れているということになります。では、何故なのでしょうか?なぜ、人々は馴れ合い主義を受け入れ、チクチク言葉であるクリぼっちを使わなくなったのか。

私の考えはシンプルです。ズバリ、SNSの普及に非常に簡単に馴れ合いが行えるようになった結果、インターネット特有のアングラ感が完全に消滅した…ということだと思います。より正確に言うならば、インターネット掲示板特有の…ですね。

先ほど、大昔のインターネットは全員が連帯感を持っていた、と言う話をしましたね。この連帯感は雑談掲示板の台頭で消滅したというような言い方をしましたが、実のところそれは完全な消滅ではなかったのです。
薄くはなったけれど、まだネットはアングラだしやってる奴らは似たような人間…そんなある種のシンパシーが存在していたのです。それがクリぼっちに含まれるイケてない奴らという概念につながっていることは明確です。

そして、SNSの普及によりそのシンパシーは完全消滅を迎えた。これが私の理論です。
もともとかなり数の多かったインターネットユーザーがさらに増大し、アングラ感が取り払われた。それにより、もはやユーザー同士が連帯感を感じることは無くなり、それに伴って人の目を気にせず馴れ合いができるようになった…。

こうして、クリぼっちという言葉は消滅したのです。

みなさんは、この変化についてどう考えるでしょうか。善悪は特に区別せず記事を執筆しましたが、この変化を好む人・嫌う人はかなりハッキリ分かれるでしょう。

インターネットのアングラ感は、ある種の特別感でもあったので、今の現状はあまりにも俗っぽいと感じる気持ちもわかります。
本当は殺伐とした空気は好きじゃなかったけど猛批判に晒されるので大手を振っては歩けなかった。趣味が共有できて嬉しい。そんな気持ちもよく分かります。

これは、問いかけです。みなさんはクリぼっちが廃れて"嬉しい"ですか?それとも、"悲しい"ですか?
この記事を通して感じて欲しいのは、そんな心の動きです。


『君たちは、このインターネット世界でどう生きるか』。2023年公開予定、監督・宮崎駿─────。

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