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在宅(家)でリハビリを始める時期

病後で体力が落ちた時のリハビリ、加齢による体力低下、認知症の方のリハビリで、理学療法士だけでなく、私たち訪問看護師にも依頼があります。

ケアマネからは「担当している利用者さんに認知症が元々あって、入院先の病院で療法士のリハビリは対象外と判断されている」「デイサービスやデイケアでリハビリをしたいけれど、本人の気が進まなくて利用は難しそうで・・・」という依頼です。

入院中の病院の地域連携室からは、急性期病院は治療が完結していない状態でも退院になることが増えているので、体調の管理や傷の手当も含めて看護師による生活リハビリの依頼があります。


生活リハビリとは、食事、着替え、入浴、トイレなどの日常生活で必要な動作そのものをリハビリと捉えて、なるべく自身で行うように援助することを言います。

数日間ベッドで安静にしているだけで、想像以上に筋力は落ちてしまうので、入院前は壁を伝って歩いていたのに、起き上がることや立ち上がることが難しくなることは良くあります。

リハビリを始める時期が遅れると、その分元の筋力に戻すことが大変になります。

そうなると介護する家族も困りますが、なにより本人の気落ちが心配です。
骨折を機に寝たきりになる方がありますが「病は気から」で、気持ちと回復力は比例していることが多いようです。

リハビリは魔法の杖ではありませんので、始めたからと言って劇的に回復するわけではありません。
訪問の度に、「元に戻すには安静にしていた期間の3倍の時間がかかると言われている」という説明をして、焦らずに運動を続ける気持ちを持ってもらいたいと伝えます。

介護保険の対象者は、現状維持が目的になる方がほとんどで、若い人のトレーニングのようにいきません。直近の生活動作(動き)に戻すことが目標です。

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実際に訪問看護師が何をするかというと、訪問して血圧や脈拍や酸素飽和度を測って、異常が無ければ運動を始めます。

病状にもよりますが、歩くことが目標の方の関わり方でやっていたことを例にすると、

まず、関節や筋肉が硬くなっていることが多いので、ストレッチや可動域まで手足や肩、腰などの関節を私たち看護師も一緒に動かします。

次は他動運動をします。
横になってもらい(時には座っている状態で)、私たち訪問看護師が手や足を触って痛みや硬さを手で感じながら動かします。

その次は、座った状態で、痛いところや動かしにくいところに気を付けながら、「立つ」「歩く」時の動作を一つずつバラバラにして動かします。
「足先を上げる」「膝を上げる」「足を振り出す」など自分で足を動かす動作を、看護師は正面か横に座って、一緒に声を出してカウントしながら行います。

「手で柵を握る」「お尻を上げる」など立ち上がる動作は体重移動するよう声をかけながら同様に行います。

途中で呼吸が荒くならないかを気にして、動悸がしないかを聞き、血圧や脈拍、酸素飽和度に変化がないのかを確認しながらリハビリをします。

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体調が整ってきて、動作が安定してきたら次のステップに進みます。療法士にバトンタッチすることをケアマネと相談するのです。

訪問看護ステーションによっては看護師のみ在籍している事業所もありますが、私の勤務した所では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が在籍していましたので、情報共有しながら訪問していました。

看護師と療法士の両者がお互いの訪問時の様子を聞くことができるので、一人の方を継続的に見ていくことが可能になります。

福祉用具の担当者が事業所に寄ってくれると、三者で現状に合った福祉用具を検討できて、特に歩くことの訓練をしている方などは、タイムリーに道具の選択ができます。

福祉用具と療法士、看護師がそれぞれの目線で、その時々にその方に合う歩行器や杖を検討する姿がありました。

道具を検討したら、家に訪問した時に使い方を説明して、福祉用具に動きを助けてもらうだけでなく、家族の悩みを聞いて関わり方のコツも伝えることができるので、気持ちの面でも介護負担が軽くなると思います。

一人一人違う病状や動き、それぞれに合わせて関わり方を専門家が検討するために、家族からの情報は重要です。「ここで困っている」という言葉がヒントになります。

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体を動かすことは、心臓や呼吸する肺の機能にも良い効果があります。内臓の病気があっても在宅(家)で過ごすために、体調をみながらリハビリをすることは大切です。

自分のことを自分でできるように維持することは、誰もが望むことです。

リハビリを始めるチャンスを逃さないようにと願います。

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