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短編小説、ショートストーリーのまとめ

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コメディからヒューマンドラマまで。短編小説やショートストーリーのまとめです。
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記事一覧

【掌編小説】花時計とうさぎ

 この世界は、草木や風や雲が季節をつれてくる。その季節を受けとめて、みんなに知らせる役割…

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色づく春

 ぬくいぬくい。日射しがきちんと熱をもっている。風はまだ冷えているが、草木も虫も鳥も華や…

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【ホラー小説】桃の夢

 ガラスが割れた。振り向くと……。    知人と一緒に山へ行き、神社で手を合わせた帰り、占…

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【小説】熊阪にわか3

 祭り奉って、祈り募って、酒場で叫べば、飯がうまい。  ここでしか、語れぬ、騙れぬ、勝た…

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【小説】熊阪にわか2

 しろしろ、まっしろ、しろうさぎ。酒を飲んでも、わさびを舐めてもまっしろうさぎ。赤く染ま…

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【小説】熊阪にわか

 今日もミトウの提灯に灯りが灯る。  通いつめるのは、狐狸(こり)、古狸(こり)、狢(むじな)…

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【短編小説】光るリンドウ

「私、小さく分裂していくの」  ふわふわの蛾をいじくりながら少女は続けて言う。  ーー小さくなって、空の星くずより淡く光って、リンドウの花みたいにポッポッって咲くのーー。  私はたまらず言い返した。 「あなた、分裂ってのは、思考が分化して複雑になって、どんどん大きくなるんだ。分裂しても小さくはならない。分裂して小さくなるのは……」  あっ、と思ったときには少女は私を見据えて笑っていた。 「私は、小さくなれるの」  分裂、の定義が変わった。とある生き物のせいで。  分裂ってのは

【短編ホラー小説】ずるずる

 足をずるずる。腕をずるずる。  今日も人を引きずる。  仏壇のある和室のソファーベッド…

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すずなる夏

鈴鳴る、涼為る、硯墨、染まる。 夏の朝は、テッセンを眺めて、扇子で扇いで、線香の煙で、涼…

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戸にかかる陰【短編ホラー小説】

 悪人てのは、汚泥、泥濘、ドブの底、それらを煮詰めて凝縮してドロリと生まれ落ちてきたもの…

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春の蝶【短編小説】

路線の、鉄が乗ってるあのコンクリート。その端にふわりと蝶が降り立った。あらら。ひかれるぞ…

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寝ぼけの鬼女【ホラー短編小説】

今、男を一人、喰ったような気がした。 朝陽が部屋に射し込んで、観葉植物に霧吹きで吹きつけ…

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冷蔵眼球【SFホラーショートストーリー】

世界は冷蔵庫に依存していた。国民の全てを把握しているのは、住民票でもなければ、スマートフ…

おじいちゃん、六時五分はもうきたでしょ【小説ショートストーリー】

酔っ払ったり、惚けたりすると、同じことを何でも繰り返してしまうのが人間というもので、いや、人間に限らず、最近では、私のパソコンも惚けたせいで、色々と繰り返し作業を長々としているようで、いつまでたっても目的のファイルが開けず、かといって、付き合いも長いので、修理屋が勧めるような方法で無下にもできず、私もなかなか気が長い方のようで、パソコンと向き合ってお互いカラカラ笑いながら、時を過ごしていたのだが、ある時、孫がこう言うものだから、困ってしまって、はて、そうだったかと思いはしたが