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起業はツラいよ日記 #33

『7袋のポテトチップス 食べるを語る、胃袋の戦後史』(湯澤規子著)を読み終えた。とても面白い本であった。戦前と戦中、そして終戦直後を知らないわたしにとって食べ物に困ること、飢えというのは遠い国の出来事として捉えてしまっていた。ここ日本でも、ほんの数十年前まで飢えに苦しむ人たちが大勢いたことなど知る由もなかった。こういう話は、もう他界した祖父母もしてくれなかったものだ。

改めて次号のB.E.では「食べること」をテーマに誌面作りをしようと強く心に決めるに至った。

社会と繋がりをもっていたわたしたちの胃袋が、いつの間にか切断され、個人のもの(あるいは家族のもの)として認識される過程を理解できたことはとても有意義だろう。今の世の中、貨幣さえ持っていれば時間や場所を気にすることなく、椅子に腰掛けるだけで目の前に食事が運ばれてくる。それどころではなく、家から出ることなく食事を自宅に届けてくれるサービスが疫病という悪夢を経て社会に本格実装されたのだ。ますます、わたしたちの胃袋は閉じて個別化、孤立化することになった。

資本主義社会では全てが金になる。料理を作りたくなければスーパーやコンビニで出来合いのものを買えばいい。店頭で注文して出来上がるのを待つのが面倒ならモバイルオーダーで注文して出来上がりを待って店に向かえばいい。外に出るのが面倒ならデリバリーを頼めばいい。もともとは、野菜も肉も魚も、自分で調達するのは面倒だからそれを生業とする人々にその仕事を任せたのが始まりだ。こうして、わたしたちは「食べるという行為」を全て他人任せにしてきたのだ。

「何を食べるか決めるのが面倒だ」という輩もいる。AIが発達してくれば、きっと栄養バランスや個人の好みに応じたメニューを提案してくれるだろう。そこまで行ってしまえば、もはや食事とは生命維持の手段でしかなくなる。いや、もう既にそうなっているかもしれない。仕事で忙しいとき、カロリーメイトを頬張るわたしはもはやカロリーを摂取することしか頭にないのだ。

それでいいのか?という問いが正しいのかどうかは分からない。しかし、気候変動問題を解決するにも、動物たちへの配慮を深めていくためにも、そして人間社会において孤立を防ぎ社会を円滑にしていくためにも、わたしたちは今一度「食べること」について真剣に考えなければならない。そう思う。


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