『ジョジョ5部』のキング・クリムゾンとエピタフの関係ってどうなってるの? という長年の疑問に終止符が打たれた件

 『ジョジョ』シリーズのスタンド能力の中でも特に意味不明な部類に属するキング・クリムゾン。今回は作中一度だけ登場する「キング・クリムゾン・エピタフ」の呼称をフックにして、その正体に迫っていこうと思います。

はじめに、キング・クリムゾンとは?
 5部のラスボスが使用する時を消し飛ばす能力のスタンド。近距離パワー型で射程は2mだが、特殊能力の射程は遥かに広い描写がある。
 消えた時間での出来事はキング・クリムゾンを持つボス以外に認識できず、時間消失後には本来起こる予定にあった結果の状態に飛ぶ。飛ぶ時間が数秒程度のため、通常ならば違和感を覚える程度で、存在には気づかない。

 ……と、書いてみてもモヤモヤする能力ですが、個人的にはパラパラ漫画をイメージしてもらえるとわかりやすいかなと思います。

 パラパラ漫画をめくっているとミスで一気に数枚分をめくってしまうことがよく起こりますね。キング・クリムゾンは時間に対してあの現象を引き起こします。
 時間が飛ぶ前のページにあったオブジェクトは、飛んだあとのページにあるオブジェクト’によって上書きされるイメージです。これによって、能力使用に巻き込まれた場合には、数秒分の瞬間移動が起こります。

お披露目のブチャラティ戦と描写が違わない?
 最初に誇張するのはジョジョにはよくあることですが、ブチャラティは死の間際に自分の姿を見ています。この描写は以後出てきません。
 ポルナレフが階段を下りるザ・ワールドのデモンストレーションも謎でしたから、あれと同じようなものなのかもしれません。5部も初期のゴールドエクスペリエンスだって随分と描写が違うし。

 ただ、あえて理由をつけるとすれば、消えている時間内にブチャラティが死亡したために能力使用の結果がバグった、と考えられます。
 数秒後のブチャラティは、本来ならば柱の裏に隠れるはずだったようです。しかしキング・クリムゾンの消失時間内に殺害され、本来ならば上書き現象が起きるはずの未来のブチャラティ’が、ボスを攻撃中のブチャラティに上書きされることはなかった。
 この不具合はキング・クリムゾンによる干渉というイレギュラーが挟まって起きた、時間や運命にとっては想定外のものです。その脆弱性の作用として、死にゆくブチャラティには自身の幻が見えた。多分そんな感じだったのだと思います。

キング・クリムゾン・エピタフ???
 ボスの別人格であるドッピオくん。彼も勿論スタンド使いなのですが、彼のスタンドもまた意味がわからない。
 具体的な疑問点をあげると、ドッピオのスタンド「エピタフ」は単なる未来視の能力なのか、キング・クリムゾンの機能制限版なのか、ということ。以下の2通りの解釈ができます。

 キング・クリムゾンとエピタフは――

 A説:別のスタンドである。キング・クリムゾン本来の能力は時を消し、その間に行動できるだけ。従属人格が使用するエピタフの未来予知を吸収することで無敵の強さとなった。 ドッピオはキンクリの腕を本当に借りている。

 B説:同一のスタンドである。従属人格のドッピオが主人格のスタンドを使用するには制限があり、額の顔による未来視しか使用できない。主人格の許可があれば腕による物理攻撃も可能だが、時間消去には人格交代が必要。

 この点がハッキリしていないから、キング・クリムゾンの能力の解釈が定まらず、よくわからないスタンドだと言われているのではないでしょうか?

 リゾット戦で、「私(ボス)の完全なる能力がそこに行けば(予知の)画面を消すことができる」という旨の発言がありますが、結局A説B説どちらのとり方もできてしまうのです。
 完全とはどこまでを差すのか。A説ならば、従属人格のエピタフが行った未来予知を対象に主人格のキング・クリムゾンを発動する連携を「完全」と呼んでいることになります。
 B説ならば、無料の機能制限版に対する製品版のような意味で「完全」と呼んでいる。
 素直に読めばA説のような気がするけれど、読み込んでいくと印象はどんどんB説のほうに傾いていく。そうしてすっかりB説が主流になったところで冷静に読み返すとやっぱりA説な気がしてくる。
 どちらの説をも完全に支持または排除する根拠がハッキリと見つからず、僕の解釈は揺れに揺れていました。きっと他の多くのファンの皆様の中でもそうだったことでしょう。

 これではあの無敵のスタンド、キング・クリムゾンの能力の範囲がどこまでなのかがつかめない。その謎がその正体が一向につかめない。
 いや、正確に言うと、つかめなかったのです。ほんのつい最近までは!
 アニメ版ではちょくちょくキャラクターの背景や関係性の補完を行うオリジナルパートの挿入が光っていましたが、なんと、ハッキリとキング・クリムゾンとエピタフの関係性について解釈を定めているのです。

 そうッ! キング・クリムゾンの正体ッ! それはB説だったのだッ!!

アニメ版の解釈からみるキング・クリムゾン
 さらっと言ってましたよね。「キング・クリムゾンの予知」発言。ドッピオが見た(つまりエピタフの)予知画像について、人格が表に出かかっていたボスが普通に言っちゃっていました。エピタフとはキング・クリムゾンと同じものだったのです。
 そうすると、「キング・クリムゾン・エピタフ」とは、「スタープラチナ・ザ・ワールド」や「キラークイーン・バイツァ・ダスト」のように、スタンドが意識して発動する普段とは一段違った特別な能力の呼称であったということになります。遊戯王で言うと起動効果ですね。

 キング・クリムゾンの通常のバトルスタイルは、おそらくブチャラティ戦で使ったような、「射程内に接近して時を消し、相手の認識の枠外で攻撃や回避を行う」ものなのでしょう。能力使用は主にカウンターや不意打ち、あるいは逃げ。主に守りのスタイルです。
 しかし正体がバレてもはや隠れる必要がなくなった際のガチバトルにおいては一段違った攻めのスタイルを用います。
 「未来の映像を見ながら、自身に不都合な画像があれば消去」していく戦法です。パラパラ漫画の先のコマを書き換えながら戦うわけですね。頭は疲れそうですが、完全無敵の戦法。これで挑めば誰にも負けません。
 未来視を積極的に使っていく戦法の名称が「キング・クリムゾン・エピタフ」なわけで、そりゃあドッピオが未来視だけを使う場合の呼び名は「エピタフ」になりますよね。


 DIOのザ・ワールドが世界を支配する能力であるなら、ボスのキング・クリムゾンは運命を支配する能力だったというわけです。
 エピタフだけなら見たビジョンは変えられないという話はありましたからね。予知の解釈変更で誤魔化せるネタは3部でやったので5部ではサラっと流されていましたが、「未来の画像は変えられない」のは確かなようです。
 変わらないなら消せばいいという強引なジャイアニズム。いやーこれは無敵だわ。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。