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【本の紹介】『小さいコトが気になります』

『小さいコトが気になります』益田ミリ、筑摩書房、2019年

コンビニに行った時、デパ地下に行った時、メールを送信した時、に思わずしてしまう「確認」に関する小噺をまとめた益田ミリさんのエッセイ集。

1番目の「ポテトサラダの確認」では好きなみそ汁の具の話になり、そういう話を真面目に語るのがツウであるとされる世界が存在することに気づいた筆者の心情が書かれており、私は都会に来て良かったなとふと感じてしまいました。田舎だと「そんなしょうもないこと考えていないで田んぼ仕事でもしなさい!」とか「勉強して偏差値の高い高校に行って将来は公務員になりなさい!」とか、なんとも身のあるつまらない話をされそうだからです。
ポテトサラダの話に戻り、筆者はもし帝国ホテルで売られている1,000円する強気なポテトサラダを食べた折には、《凡人から脱却する》ために「帝国ホテルのポテトサラダは、〇〇が入っていますよね」と《鬼の首を取ったように語り出すに決まっている》と言っていました。気持ちはよく分かります。飲み会の席でツウな話で盛り上がった時には先陣を切ってこの話をしてしまいそうで自分が恥ずかしいです。

「買い物カゴの確認」では他人のカゴの中身をチラッと覗きたくなる筆者の様子がイラストで描かれています。ダイエット中かな、男子高校生のいる家庭かな、と勝手に想像を膨らませている姿はなんとも微笑ましく可愛らしいと思いました。スーパーのカゴの中身にも人それぞれのドラマがあるのかもしれません。

「エンドロールの確認」では、映画館で観るエンドロール中は確かに手持ち無沙汰になってしまうから《エンドロールで帰っていく人をどこかでカッコいいと思っているわたし》がいる様子が描かれていました。
ダサいのか??とセルフツッコミも入れていました。
エンドロールが流れ終わって一瞬真っ暗になり次の瞬間に明るく映画館が点灯されますが、飛行機が到着した時に我先に降りようとする姿に似ているな、と同感しました。

「一〇〇円ショップの確認」の最後に《わたしは、自分に降り掛かっている面倒な案件のすべてを忘れ、ただただ一〇〇円商品のことだけを考えていられたのである。なにもない場所より、ありすぎる場所のほうが逃避できる。案外、そういうものなのかもしれなかった。》と書かれており、現代に資本主義社会と物質至上主義(?)のようなものを感じました。現実逃避したい時は物が無い場所に行くのではなく、物に囲まれているほうが意識を遠くへ向けやすいのかもしれません。

総じて、細かいことに目を向けられる筆者の感度の高さが確認でき、しみじみと「わかるなぁ」とか「にやにや」とか、してしまいました。

皆さまも良かったらぜひ読んでみてください。

以上、最後までご覧いただきありがとうございました🍨


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