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近所の銭湯のサウナで泣く

昨日買った本「ある行旅死亡人の物語」
これがまあ面白くて、椅子に座って読み、ソファに横になって読み、途中うたた寝しつつも目が覚めたと同時に読み、ヘンテコな体勢で無理くりに読み続け、

そして読み終えた私は圧倒的疾走感と感動を受け取り、翌朝肩と首に強烈な違和感を得た。

(こんな姿勢で読んでたら明日肩こりやばいかも・・・)

って予想していたのに姿勢を改めなかったので完全に自分のせいである。

少しでも和らげたい一心で近所の銭湯に行った。たっぷりの湯で髪の襟足ぎりぎりまでつかり、電気風呂で皮膚の下の筋肉を震わせ、サウナと水風呂をせっせと行き来していた。

雨のおかげで利用客は少なく、ゆっくり時計を眺めていた。

水風呂の近くで休憩していると、向かいの温浴風呂につかった婦人に声をかけられた。

「ここの水風呂は冷たくて気持ちいいわよね。肌にいい。もう私、78才。」

他愛無い会話を交わした後に

「じゃ、私もっぺんサウナ行ってきます。」と手と指でアッチの方、とジェスチャーを交えて言うと「はい、いってらっしゃい。」と、婦人が風呂の中から見送ってくれた。

サウナは貸切だった。
サウナの中で婦人からの「いってらっしゃい」がぐるぐる繰り返され、そのうちになぜだか泣けてきた。

なぜ涙がこぼれるのか。なぜ!

なぜ!と戸惑いながらも、これには理由があるはずだ、それもすぐに見つかるはずだ、と、灼熱の箱の中でぐにゃぐにゃ溶けていきそうな脳みそを一生懸命整えながら答えを探した。

サウナのTVで、ゆずとKinKi Kidsが全部だきしめてをコラボして歌っていた。平成エモーショナル。

予想通り、答えには安易に辿り着いた。

「いってらっしゃい」と、自分より年上のひとに心を込めて言われたことに心を打たれたのだと思う。それがしっくりきた。

婦人に母性を感じたのかもしれない。

「いってらっしゃい」という言葉というのは、人
を抱きしめることができるんだな。

私は今日、「いってらっしゃい」という言葉でハグしてもらいました。

ハグしてもらった私は、とてもあたたかい気持ちになって、強くなりました。

何才になっても学ぶことがあります。
発見があります。
親にも先生にも教わらなかったことを、たまたま銭湯で出会った人に教わることもあるのです。


そんなわけで近所の銭湯のサウナで泣いたって話でした。

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