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【アーカイブ】みんなで つくろう 小田付 重伝建 標識プロジェクト 2019

喜多方市小田付地区は江戸から昭和にかけてできた古いまちなみが印象的な通りで平成30年に文化庁より「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。小田付地区の伝統的建造物(特定物件)であることを示す標識がつくられるにあたり、どんな標識にすると小田付、喜多方の人々が誇りを持ち、見る人が楽しめるかをみんなで考えていくプロジェクトです。喜多方を学び場として長きに渡り訪れている筑波大学原研究室や喜多方市内の学校と連携をはかりながら、まずは小田付の宝物を探る活動を進めました。

主催 キタ美実行委員会
協力 筑波大学 芸術系 原研究室, a good day Co.,
   テクノアカデミー会津 観光プロデュース学科, 喜多方市
地域づくり活動支援事業

■おじいちゃん・おばあちゃんにきく小田付

おたづきに長く住んでいるおじいちゃん・おばあちゃんに小田付の昔の風景について取材しました。

■まちなみ調査班&まちなみチャンピオンシップ

小田付を歩き地域の「たからもの(大切なもの、カッコいいところ)」をカメラに収め、その中からおたづきのアイデンティティを探るトーナメントバトルを実施しました。

ワークショップ まちなみチャンピオンシップ 優勝作品「牛頭天王社ときゅうりの神様」

「おたづきのいいところ」を再発見するために、幼稚園生、小学生、中学生そして大人たちが、会陽館に集まりました。「まちなみ調査班」では子供と大人が混ざって3つのチームを作り、小田付地区を探検しました。当日は雪が降っていましたが、子供たちは夢中になって小田付のいいところを探し、たくさん写真を撮っていました。子供たちの撮った写真は、「まちなみ調査マップ」で一部紹介させていただきます。その後、写真をみんなで鑑賞し、その写真の中から「おたづきのいちばんいいところ」を見つけたチャンピオンを決めました。今回、チャンピオンになったのは、「牛頭天王社ときゅうりの神様」の写真です。会場の子供たちからは「何できゅうりなの?」「誰が食べるの?」といった声が飛び交いました。撮影した中学生は、小田付には河童の伝承があり、きゅうりの神様として今も親しまれていることをおばあちゃんに教わったと話していました。小田付の生活や人々の思いを上手に切り取ることができています。ワークショップを通じて、子供から大人まで一緒に楽しみながら小田付地区を探検し、小田付のいいところをたくさん探すことができました。

まちなみ調査マップ

■かまど基地と、そこから見た喜多方のまちと人

つくばで一汁一菜の朝ごはん屋さんを営む小竹拓真さんは、筑波大学在籍中のアートプロジェクトをきっかけに喜多方を訪問。以降、喜多方に20回以上訪れています。今回は、「かまど基地」にこづゆとおにぎりの準備、調理担当として参加しました。小田付のみなさんとのこづゆづくりを通じて見つけた、喜多方、そして小田付の魅力を語ります。

a good day Co. (店主:小竹 拓真)
茨城県つくば市の、おにぎりと一汁一菜の朝ごはんを摂れる場所。日本各地から集めた食材や器を、ゆったりとした空間で楽しむことができる。

僕が初めて喜多方を訪れたのは2014年4月喜多方駅前の米蔵での「米ジェクションマッピング」のお手伝いでした。(星宏一さん、お世話になりました!)それから、かれこれ20回は喜多方を訪れています。

2016年に卒業して酒造会社に就職し、昨年夏にかねてより挑戦したかった朝ごはん専門の小さなお店を始めました。大学近辺の知人の営む飲食店の店舗を間借りし、営業しています。この原稿を書いている現在は感染症の影響もあり一時休業中ですが近いうちにまた、近くで暮らす人々の朝のコミュニティとして再開出来ればと考えています。

僕は今回のワークショップで、「かまど基地」、竈炊きご飯のおにぎりと、会津の郷土料理こづゆづくりを担当しました。本来の企画としては、小田付に長く暮らす方々から郷土料理を学びつつお話を伺い、「まちなみ調査班」とは違った視点から小田付の地域資源を探ろうというものでした。残念ながら今回は炊出しに徹することになりました。

こづゆは喜多方のみなさまには馴染み深いものでしょうし、僕の作る塩むすびも特別なものではありません。かまど基地で僕があらためて感じたことは、出汁を丁寧に取ったり具材を食べやすい大きさに切ったりというこづゆの調理方法が、喜多方の人々と同じ優しさ溢れる味わいを生むこと。火を起こして気にかけてお米を炊く。食べる人のことを想って握る。それを近くの人と一緒になって味わう。そこに楽しい時間が流れていました。調理中にも、各家庭で少しずつ異なる個性があるレシピや、郷土料理としての背景について教わりながら江畑さんはじめお手伝いいただいた様々な人たちと分担して協力しあいました。より優しい味わいを想って工夫しあったことが、大きなコミュニケーションと交流を生むいい試みであったように思います。

寒い雪が降るなか、まちなみ調査を終えた小さな探検隊たちと参加者のみなさまが、こづゆと塩むすびで温かい時間を過ごせていたのではないかととても嬉しい気持ちでした。日を改めて開催して、楽しい交流の時間を持つことができるようなときを願っています。

雪の喜多方は久しぶりでしたが、改めて喜多方にもたらされる水の清らかさに驚きました。野菜、お米、お酒からは勿論ですし、今回はラーメンスープからも! からだに入っていくもの全てに水があり、それを最大限使いこなす人々が暮らしている。そして喜多方には地元への愛着と向上心があります。それが僕たちを何度も喜多方へ連れてくるのだと思います。ワークショップは小田付重伝建標識プロジェクトを進める喜多方のみなさん、筑波大学原研究室にとっても、新しい視点から見慣れた風景を見るきっかけになったのではないでしょうか。子供の視点は新鮮で大切な小田付の地域資源であると感じました。コンパクトなコミュニティーを維持する小田付で、子供たちが大きく成長した時にも誇れる標識ができるよう、自分の大好きな食べること(飲むこと!)でお力添え出来ればと思っています。これまでのように喜多方へ足を運び、関わり続けていきたいと思います。(小竹拓真)

ーーーおたづきのストーリーは尽きない地域資源だ!

「おたづき探検隊」は楽しく探検しながら地域資源を見つけられるよう設計しました。ワークショップを通じて、水路、建築、それらをつなぐ空間など、豊かな地域資源を再確認しました。そして、「きゅうりの神様」のようにその背景にあるストーリーが子供たちにいきいきと語り継がれている様子に感激しました。おたづきの物語を探して、可視化して、また新しい物語が生まれる。そんなふうに、おたづきの探検が続いていくきっかけになるような標識がデザインしたいと思いました。(原 忠信)


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