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【ショートショート?】炉と羽根

ぽつり置かれて 香を焚く
翡翠の色の炉が一つ

煙は細く 立ちのぼり
その先でふっと 消えていく

部屋には天窓 ひとつあり
開け放たれた そこからは
風が運んだ 羽根ひとつ
ひらりひらりと おりてくる

白ひといろの その羽根は
くるりふわりと降りてきて

のぼる煙に迎えられ
わずかにすわん 浮き上がり
おりる速さを ゆるめゆく

地に着くまでの わずかな時を
噛みしめるように ゆるゆると

翼にあった そのときを
懐かしむように ゆるゆると

羽根は床へと向かいゆき
やがてふぅわり地についた

羽根は地にあるそのときも
先と根元を天に向け
またくる風を待っている
未練深しと思うのか
こころざしだと思うのか
それはこちらの胸ひとつ

ただそのそばには炉が一つ
煙はそこでたちのぼる

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