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検証:各総裁候補の放送業界への態度は?

Introduction
自民党総裁選候補が出揃い、論戦が盛り上がっている。MediaBorder的には放送業界への影響が気になるところ。そこで元フジテレビで政治と放送業界についても詳しい塚本幹夫氏に、各候補の放送業界への態度についてご寄稿をお願いした。この総裁選が今後の放送業界をどう左右するか、皆さんの参考にしてもらいたい。

塚本幹夫さんPhotoS

書き手:株式会社ワイズ・メディア 取締役メディアストラテジスト・塚本幹夫氏

自民党総裁選挙の候補者が出揃った。官邸や政党担当は経験ないが、かつて報道の政経部に身を置いたものとしては、どうしても裏の動きとか票読みとか面白い方に目がいってしまいがちだが、菅総理が総務省を“天領”として放送行政にも深く関与したこと、安倍前総理もメディアにかなり関与してきたことを顧みると、自分がメディアストラテジストとして本来なすべきは、候補者それぞれがメディア、特に許認可事業である放送に対してどのように向き合ってきたのか検証することではないのだろうか。と境治さんに指摘され、それではと過去の実績から紐解いてみることにした。(なお文中、候補者の敬称は「氏」で統一している)

放送をコントロールしたい?高市氏

まずはなんといっても高市早苗氏。2回にわたり総務相をつとめたが、放送部門には特に深くコミットしてきた。2度目の総務相就任に際しては、憲法改正のCM規制(国民投票法改正に際して野党がCM規制を求めた)について当時の安倍総理から言い含められたと噂されていたので、総じて民放には優しかったように見えた。民放連はそれに応えた訳ではないだろうが、表現の自由を理由にCM規制に慎重な姿勢を示し、結果として方向性が一致した。逆にNHKを常にターゲットにし、総務相時代は放送諸課題検討会に時間のある限り出席。三位一体改革(業務合理化、受信料値下げ、経営ガバナンス)の実行をNHKに強く迫り、放送行政を担当する情報流通行政局の人事は課長級まで自分で選ぶほど力を入れていた。今回の出馬表明でもNHKの受信料値下げに再度言及するなど、ある種の執念を感じる。

では民放にとってはいいのかというと必ずしもそうとは言えない。2016年2月には衆議院予算委員会で、放送法4条(政治的公平性)違反を理由に電波法上の停波を命じる可能性を否定しないと答弁した。通説では放送法4条は倫理規範とされており、あえて罰則に言及した高市氏には「放送をコントロールしたい」という強い思いが伺える。

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