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そもそも日本で「公共メディア」は成立するのだろうか

BBCの料金問題に色めく新聞業界の人びと

一昨日(4月30日)、共同通信によるこんな記事を見かけた。

「BBCが受信料一律徴収終了へ」の見出しを見てどう受け止めるだろう。英国では受信料の支払いは「国民の義務」であり、払わないと厳罰に処せられると聞いている。「一律徴収終了へ」ということは「払わなくていい人もありになると決まった」と受け止められる。だが本文を読むと「可能性」となっていて「終了へ」は言い過ぎではないかと感じた。さらに・・・

BBCが一律徴収を廃止して別の制度に移行すれば、同じ公共放送であるNHKの受信料を巡る議論にも影響を与えそうだ。

上記共同通信記事より

これが言いたいのかと呆れた。前に総務省の放送制度検討会での新聞協会の発言について少し書いた。これほどあからさまな「抵抗勢力」もないだろうという発言だった。(新聞協会の意見書を発表したのは共同通信の人物だった)

BBCの受信料について報じつつ、NHKの議論への影響を示唆しているのは、「NHKも受信料一律に取れなくなるんじゃないの?」と言いたくて仕方ないとしか思えない。なんと器の小さな人びとだろうと嘆かわしく思ってしまう。同じ日の夜、朝日新聞も似たような記事を配信した。

なんと「受信料を廃止?」と共同通信より大胆な書き方だ。だがよくよく読むと・・・

英メディアは「政府は公式に受信料の廃止を示唆した」(英紙テレグラフ)などと報じている。

上記朝日新聞記事より

地元紙が報じたことを「廃止?」と書いたわけで、日本のクオリティペーパーのお里が知れるというものだ。これでは「釣り見出し」と言われても仕方ない。一種のコタツ記事とも言える。
英国政府の発表を読むと「一律徴収廃止」とも「受信料廃止」ともまったく書かれてはいない。

「書かれていない」は言いすぎた。私の英語力では「書かれてはいないようだ」とするのが正しい。なにしろ長くて読み取るのがそもそも大変。

新聞業界の動向についてのブログ「DON」で南茂樹氏が翻訳に取り組んでいる。まだ続きがあるが、とりあえず2回のブログを読むといい。

まあこんな感じで、BBCが実際にどうするのかは英国政府の次の発表を待つしかないが、新聞業界がざわめかなくても「じゃあNHKどうするの?」とメディア関係者は考えてしまうだろう。本稿はそこを考察してみたい。

公共放送から公共メディアへ、という理念はわかるが・・・

少し前までNHKは「公共放送」を名乗っていたが、2015年に発表した「NHKビジョン」では「公共放送の原点を堅持」と「公共メディアへの進化を見据えて」とある。つまり放送で公共的役割を保持しつつ、ネットでも情報発信してそれも含めた「公共メディア」に進化していくと表明したのだ。

そして2018年度〜2020年度の経営計画では「公共メディア実現へ」とし、続く2021年度〜2023年度の経営計画には「新しいNHKらしさの追求」を標榜している。すでにNHKは「公共メディア」へと進化し、それに基づく新しい姿に変わりつつある、ということだろう。

標榜している理念はわかるが、料金体系としては「公共放送」のままだと言わざるを得ない。だって受信料はこれまで通りテレビを持ってる世帯からしか徴収していないのだから。放送でもネットでも国民のための公共性のあるコンテンツを配信するのなら、ネットでも料金を取るのがスジというものだろう。

そうしたい気配はある。NHKがちょうど今(4月22日〜5月7日)実施中の実証実験はテレビをあまり見ない人、そもそもテレビを持っていない人にNHKのNEWS WEBとNHKプラスを利用してもらう内容だ。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000809857.pdf

これについて、受信料をネットのみの利用者から取るための実験なのだと言う人もいる。世の中にはNHKの受信料に対して並々ならぬ関心を持つ人がいて、ことあるごとに「俺たちからネットでも受信料を取ろうとしている!」と主張する。この実証実験の意図が料金徴収にあるとは言わないが、いいスコアが出たら「だったらネットからも取れないかなー」と期待するNHK幹部もいるだろうと想像する。

だがネットでの情報提供について果たしてNHKは受信料(名称はこれでは合わないが)を取れるだろうか。筆者の答えはこれだ。
「NHKはネットから受信料を取れないし、取ろうとしない方がいい」
BBCは取るかもしれない。そしてBBCは取れるだろう。だがNHKは取れない。その理由は「これまでの経緯」にある。

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