【感傷朗読】共依存になりきれなかった女の子の話【台本】

https://www.youtube.com/watch?v=t6sPE2TDu6Q



そろそろこの呪縛から解き放たれたい。
その一心で、ここに残す。


お互いの線引きが曖昧で夢見がちだった。
中学生みたいなふたり。

私が人生で初めてお酒を飲んだのはその日同じく20歳になった彼とだった。
付き合っていたのはたった半年だけだったのに、特別な思い入れがあって今でもあの時のことを大切に思ってしまう。

小さくて可愛くて、外見も全部が大好きだった。
低い身長も、可愛らしい丸い顔も、柔らかいほっぺも。
黒縁眼鏡、丸い黒髪。男の子のわりに細い首、それでいてゴツい喉仏。
そして何より低音で響く彼の声が好きだった。
今もそう思う。


––––

別れた理由は単純で、
価値観が合わなかったから。

昔から男友達が多かった私は恋人がいても関係なく普通に遊びに行ってしまう。けれど、果てしなく純粋だった彼は私のその言動に全てが信じられなくなってしまった。

自己肯定感が低くて心配性。
私はいつも論破されてばかりだった。価値観を真っ向からぶつけられると、自分を正当化する言葉を上手く見つけられなかった。

周りの人たちには「全然お似合いじゃない」「早く別れなよ」とよく言われた。私は、壊れものみたいに繊細な彼をとても大事に思っていたから、そんな風に悪く言われるのが嫌で次第に誰にも話さなくなった。


2人の世界はいつも2人だけ。
ずっと狭い世界に浸っていた気がする。



喧嘩になると「もう連絡してくるな」と言われて、その度に私が全力で引き止める。
付き合っていた期間はひたすらその繰り返し。
ただ試してるだけだって、分かってた。


彼は気持ちが溢れると、いつも反対の言葉で言ってしまう。
「嫌い」は「好き」。
「帰って」は「ここにいて」。
「もういい」は全然「よくない」。

“子供っぽいな”と思いながらも
“寄り添ってあげなきゃ”という気持ちでいっぱいになる。
何をしてあげるべきかが分かってしまう。
相手にとっての最善を第一に考えて動いてしまう。
次第に私は、そんな自分が不安になった。



自分が自分ではなくなっていく感覚があるのに、ずっと気づかないフリをしていた。
離れてしまうことが怖かった。
本当は私自身が誰かに必要とされることで、必死に自分の存在価値を保っていた。

それが半年続いたとき、もう限界だと気付いた。
最後は、私が引き止めなかった。
ふわふわしていた2人の世界は、簡単に終わった。


––––

音信不通になって数年が経ったあるとき、
突然彼から連絡が来た。
本当は会うべきじゃなかった。
目を合わせてくれない彼、視界に入りたい私。当時の2人に戻ったような気がした。

彼は何も変わっていなかった。
あのときのまま、
「できることならまた彼氏にして欲しい。」と言った。
弱くて儚かった。


すべきこと、返すべき言葉、私には正解が分かる。
ずっとそれに応えてきたから。
また同じことを繰り返すのか。


2人とも大人になったはずだった。
自分こそ、あのときから何も変わっていなかった。
それがいちばん悲しかった。



彼はいつも感情のコントロールに苦しんでいて、ずっと生きづらそうに見えた。
人を好きになりすぎるあまり、期待通りに行動しなかった相手に対してどこまでも失望してしまう。
捨てられるんじゃないかという不安といつも独りで闘っていた。


これ以上苦しまないためにも、強くなってほしいと心から思う。
なのに、あの時と変わらないその弱さが、私は今でも好きなんだ。



同じことはもう繰り返せない。

––––

連絡が取れなくなって、また1年が経とうとしている。



2人が同じ日に生まれたことは、運命なんかじゃなかったのかな。
好きだから一緒にいられない。
関わりたいのに関われない。
そんなことがあるんだね。



「会いたいです。」

会えなくてもいい。

「あんまり悲しまないで、楽に生きて。元気でいて。
 生きづらい人生から、助けてあげられなくてごめんね。」


––––

人は、白と黒できっぱり分けられる生き物じゃない。
でもそれでいいんだよ。
弱くて汚い部分があるからこそ人間らしくて素敵なんだ。



弱くたっていいじゃん。
毎日頑張って生きてるんだからさ。





【共依存になりきれなかった女の子の話】

おおすかちゃんを!あなたの力で!生かしてたもれ!✌︎