見出し画像

【洋書多読】It Ends with us(193冊目)

『It Ends with us』を読了しました。

本書は新宿の紀伊國屋書店別館の洋書専門店で、売り上げランキング上位にランクインしていました。パラパラっとめくってみたところ、英語もそんなに難しい感じがしなかったので、購入することにしました。

青少年向けのピュアな恋愛小説かと思いきや…

カバーの感じといい、序盤の展開といい、「少女向けのピュアな恋愛小説か」と思っていたらとんでもなかったです。

シンプルに本書をまとめると、これは「虐待を見て育った女性の心理を克明に描いた作品」です。

ただ、本書は本当に読む人によって評価というか、「これはこういう本だ」という印象が随分変わると思います。ただのエロ小説じゃないか、と思う人もいるかも知れないし、母と娘の愛の物語であると思う人もいるかも知れないです。

いろんな「読み」の可能性がある。これってある意味で「名著」の条件だと思うんですが、いかがでしょう。先にご紹介したアマゾンのリンク先で、レビューが14万件もついている(2022年9月2日現在)こともまた、そのことを物語っているように思います。

信田さよ子さんが喜んで読みそうな、心理描写の克明さ

予備知識無しで読んだもんだから随分面食らってしまった本書ですが、この本では主人公の、母が虐待されているのを見て育ってしまった女性の心理が結構克明に描かれています。

その女性が大人になって恋をしていく中で抱く心の葛藤を描くさまは、個人的にはとてもよくできていると思いました。僕も心理畑で長年働いていたので、こういう事例、あるある、って感じで読み進めていくことができました。ま、リアルな事例はもっと生々しいけどね。

同時に、自分の家族のことを思い出したりもし、ちょっと苦しくもなりました。それくらい、真に迫った物語です。

英語のシンプルさもまた、この本がちょっとした事例検討会の読み物的ななにかを思い出させてくれるような気がしました(もちろん、こんなクソ長い事例を出したら出席者からキレられますけれど)。

一方で、心の襞を繊細に描写する物語としてのクオリティも素晴らしく、著者の力量を感じます。

日本の心理カウンセリング会の第一人者で、虐待などの事例に詳しい信田さよ子さんなんかが読んだらどう思うんだろうか?って考えました。

英語はそんなに難しくないです

本書の英語レベル的は、「児童書以上、ヤングアダルト未満」くらいとおもいます。児童書はもうそろそろ卒業したい、でも『The Fault in Our Stars』とか『Me Before You』といった、タドキスト界におけるヤングアダルト小説の金字塔に行くのはちょっとまだレベル的に…という方にピッタリのレベル感かと思います。

個人的には、ヤングアダルトの恋愛小説って変に話がメルヘンチックになりすぎたりするところや、文学的、習字的表現がちらちらと出てくるところとか、死にかけてるのに二人でいきなり旅に出るとかみたいな突拍子もないSTORY展開になったりするところに読みづらさを感じることが多々あります。

でも、『It Ends with Us』はそういうのはないです。英語力に自信がなくても、好みは分かれるかもですが、基本的には安心して読み進めていくことができます。

洋書の心理系のフィクションと言えばサイコサスペンス系が多いですが、サスペンスだと逆に登場人物がたくさん出てきすぎてプロットも複雑になり、書いてる英語はわかるけど、誰が誰で何が何だか訳わからない…みたいななことが往々にしておこってきます。
が、『It Ends with Us』では、そんなにたくさんの登場人物は出てこないので、その心配もありません。

結末も、人によってはバッドエンドであると思う人もいるかもだけど、僕はハッピーエンドだと思いました。その点も、安心して読み進めることができると思います。

実は久々にハマりました

47歳のおっさんがこんなことをいうのも恥ずかしいんですが、この25歳になる乙女の葛藤を描いた『It Ends with Us』、個人的には去年の今頃読んでいたサイコサスペンス『The Silent Patient』や、在日2〜3世の物語である『PACHINKO』レベルでハマってしまったのでした。

物語が物語なので、万人におすすめできるものではないですが、手頃なレベル感の洋書をお探しの方には是非、ご紹介したい一冊です。

この記事が気に入っていただけましたら、サポートしていただけると嬉しいです😆今後の励みになります!よろしくお願いします!