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【洋書多読】New from Here(207冊目)

少し前、2022年の12月31日になりますが、『New from Here』という児童書を読了しました。

本書は敬愛する渡辺由佳里さんがご自身のブログ『洋書ファンクラブ』で紹介されていたものです。最近の僕は同ブログの記事を参考に多読する洋書を選んでいることが多いです。

渡辺さんが毎年年末に実施する「これを読まずして年は越せないで賞」という、その年のおすすめの洋書をジャンル別に紹介する企画でも、児童書部門で同賞にノミネートされていた一冊です。

内容的にも大変興味をそそられるもので、かつ多読にピッタリの条件を兼ね備えていると思われた本書、ずっと積ん読にしていたのですが、やっと読むことができた次第です。

とってもホットな話題をもとに実話をベースにして書かれた児童書

『New from Here』は、コロナウイルスのパンデミックが始まった2020年の初頭、未知の殺人ウイルスによるリスクを回避するため、香港から米国に渡った中国系アメリカ人の家族の物語です。

ある事情があってお父さんは香港に残ることになり、お母さんと3人の兄妹たちがサンフランシスコへ移住することになります。主人公の男の子はADHDがあって、環境の変化についていくのが難しい面があります。これが事態をより複雑なものにします。

中国のウエットマーケットから始まったと言われていたコロナウイルスのパンデミック、当時のアジア人に対する偏見は結構なものがありましたが、このお話は、そんな差別偏見について、著者であるKelly Yang氏が経験したことをもとに書かれた半ノンフィクションだそうです。

アメリカの一流大学を卒業してバリバリのキャリアウーマンだったお母さん(著者?)。香港で生活していた時は、子どもの面倒や掃除食事の用意などの家事全般は主人公の兄妹のお父さんが仕切っていたのですが、移住を機にお母さんが一人で三人の息子の面倒を見つつ家事全般をこなさなければならない状況に追い込まれます。

自由の国であり、医療先進国でもあって当時コロナウイルスに対して最も安全な国の一つであると世界が信じていたアメリカでこの一家を待っていたのは、母の失業とアジア人である彼らに対するあからさまな差別でした。

香港の会社を解雇され、アメリカで就職口も見つからず、コロナ禍で健康保険にも加入できないというかなりリスキーな状況に追い込まれたこの一家。この先一体どうなっていくのか…?

コロナウイルス、アジア人差別、ADHDとなかなか盛り沢山な内容で書かれた児童書です。

世界が注目するトピックに英語で触れるのは、英語力アップに最適の方法

このnotesでも折に触れて言及してきたように「世界中で注目されているトピック」に英語で触れるというのはなかなか効果的な英語力アップの手段です。

僕自身、英検一級を取得してからの英語力は「コロナウイルス」「ロシア・ウクライナ戦争」のニュースを毎日一生懸命聞きまくったことで、とりわけリスニング面で大きな伸びを経験することになりました。

世界が注目している大ニュースというのは当然日本にも輸入され、日本語に翻訳されて報道されることになります。一人が一台スマホを持つ超高度情報化社会において、僕たちは好むと好まざるとに関わらず、世界中から輸入されて翻訳されるグローバルな情報の波にさらされ続けています。

とりわけコロナウイルスのようなグローバルな関心事に対しては、知らず識らずのうちに日本語である程度の背景知識や情報が入ってきているわけで、これは多少難解な英語の理解の大きな助けになるんです。

つまり、自分のレベルを超えた英語力で話されたり書かれたりしている情報を理解できるということ。自分の実力以上の英語に触れ、その英語を「理解できる」経験ができるチャンスが増えていくというわけなんです。

これは英語学習者にとってはいわばドラゴンボールの「精神と時の部屋」に入るようなもので、ワンランク上の英語に触れ続けているうちに、気づけば自分の英語力がワンランクもツーランクレベルに上がっているということになります。

ニュース英語は敷居が高いという人も、『New from Here』のような児童書ならそんな心理的抵抗感は低いかもしれません。児童書とはいえネイティブに向けて発信されているコンテンツです。大変良質の英語で書かれていることは論を待ちません。

その良質の英語は、実際に僕たちが2年前に経験して世界中で報道されて周知の事実となった「歴史」を描いています。こんなに理解しやすい状況が整った英語のテクストってなかなかありません。

併せてADHDやアジア人差別といったトピックに興味がある方にとっては、もはや垂涎の内容と言えるんじゃないでしょうか。

英語レベルはほどほど

そんな『New from Here』ですが、気になる英語のレベル感に関しては「中の中」といったところです。

『Holes』(ルイス・サッカー)や『So B it』などの有名どころの多読洋書レベルの難易度で、読んでいてストレスを感じることはありませんでした。

難しすぎず、かと言って簡単すぎず、英検1級〜準1級レベルの適度な難易度の英単語がコンスタントに出現する一方で、会話特有の砕けた表現なども出現するので、メリハリがあってついつい読み勧めてしまいます。

物語そのものの魅力も比較的高いので、気づいたら一時間ぐらい読んじゃってた…みたいなこともしばしばでした。

物語も面白いし、英語の難易度も程よいので、ある程度の経験を積んだ英語学習者の方全てにご一読をおすすめしたいクオリティになっています。

冒頭にご紹介した渡辺由佳里さんの「洋書ファンクラブ」でも、結構高い評価を得ています。

学習として、ちょっとした息抜きとして。結構幅広い英語力の方に手にとって楽しんで頂ける内容なんじゃないかなと思っています。


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