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アマゾン帝国 独禁法違反“ネッシー”でネット監視 情報が栄養源 巨額の超過利益〜すべてがNになる〜

2023年10月5日【経済】

 アマゾン帝国の悪質な商行為が再び告発されました。米連邦取引委員会(FTC)とニューヨーク州など17州の司法当局は9月26日、米インターネット販売最大手アマゾン・ドット・コムを独占的な力を利用して、出店者や消費者に損害を与えているとして反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴したのです。

 FTCは、一部が黒塗りになっている172ページの訴状を公開し、その「手法」を明らかにしました。

 アマゾンのサイトで販売する出品者が他のサイトより低価格で販売しているのを発見した場合、その出品者をアマゾン上の検索結果の下位に表示して、実質的に消費者から見えなくするなどの罰を与えていました。その結果として、オンライン全体での商品価格を高止まりさせていました。

 アマゾンは、同社サイト内よりも安い製品を外部サイトで販売している業者を調べるためにある「監視ネットワーク」を構築していました。インターネット上で情報を集めるこの「監視ネットワーク」は、「プロジェクト・ネッシー」の名で呼ばれていました。

 訴状は次のように指摘します。

 「アマゾンは、インターネットを常に監視する高度な監視ネットワークを導入し、アマゾン帝国を脅かす可能性のある割り引きを探している」

 「プロジェクト・ネッシー」は、インターネットの海に生息し、商品取引情報を栄養源とするモンスターのような存在です。訴状への出現は16回を数えます。このモンスターによってアマゾン帝国には、巨額の超過利益がもたらされたとみられます。

 また、出品者に対し、アマゾンの高額サービスの利用を条件付け、出品のコストを引き上げていました。

 同社はこれまでにも、FTCから訴えられています。5月には、子どもたちの録画を無期限に保存し、親の削除要求を無視してきたとして訴えられました。子どもたちのプライバシー保護に違反するというものでした。6月には、利用者の同意を得ずに有料会員に登録させようとしていたとして訴えられました。数百万人を登録に誘導し、意図的に解約しにくくしていました。(金子豊弘)

自由公正な競争の回復求める

リナ・カーンFTC委員長

 帝国アマゾンを訴えたFTCのリナ・カーン委員長は次のように述べています。

 「私たちの訴状は、アマゾンが独占を不法に維持するために一連の懲罰的かつ強制的な戦術をどのように使用したかを明らかにしている」「訴状は、アマゾンが現在、そのプラットフォームで買い物をする数千万のアメリカ人家族やアマゾンに依存している数十万の企業に対する価格をつり上げ、サービスを低下させながら、独占力を悪用して自らを富ませている様子を指摘した詳細な申し立てを述べている」「本日の訴訟はアマゾンに対し、こうした独占的行為の責任を追及し、失われた自由で公正な競争の約束を回復することを求めている」

 カーン氏は研究者時代の2017年に「アマゾンの反トラストのパラドックス」と題した論文を発表し注目されました。同論文の冒頭では「アマゾンは21世紀の商業の巨人だ」と指摘。アマゾンを筆頭とするハイテク大手を規制すべきだと主張しました。

 21年6月にはFTC委員長に就任しました。就任にあたって同氏は、「同僚と協力して、企業による不正や権利の侵害から一般市民を守ることを楽しみにしている」と述べていました。

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