けいざい四季報2023Ⅳ (4)半導体産業 “青天井”に税金を投入〜すべてがNになる〜

2023年12月29日【経済】

岸田文雄首相は「安全保障の大型案件」(10月23日の所信表明演説)だとして半導体企業に“青天井”に税金を投入しています。

特定企業向けに

 11月29日に成立した2023年度補正予算では、半導体産業の支援事業に約2兆円を充当。先端半導体企業ラピダスや台湾積体電路製造(TSMC)など、特定企業向けの基金を積み増しました。これまでの予算措置でラピダスには最大3300億円、TSMCには最大4760億円の支援が決まっています。
 12月22日に閣議決定した24年度当初予算案では、人工知能(AI)半導体の開発支援に48億円、ラピダスなど半導体工場を建設する自治体向けに工業用水道整備支援で20億円を計上しました。同日に閣議決定した税制改定案には、半導体などの戦略物資の生産や販売に応じて10年間にわたって減税する措置を盛り込みました。
 一方、ラピダスの東哲郎会長は10月25日の都内での講演で、「重要な部分は国防」「まずアメリカのお客に届ける」として米国の軍需への貢献を明言。巨額の税金が軍事に使われようとしています。

米が規制を強化

 ハイテク分野で覇権を争う米国は、対中国の半導体輸出規制をさらに強化する方向です。
 12月21日には、米商務省が自動車や航空、軍需など米企業100社を対象に、中国からの非先端半導体の調達状況の調査を年明けから開始すると発表。今後の貿易制限措置の判断材料にします。
 すでに米国は先端半導体やその製造装置の対中輸出を規制しており、日本も米国の要請を受けて対中輸出規制を実施しています。一般半導体への規制拡大は、自動車や電機など幅広い産業に影響を与えることになります。
 米中対立の深刻化などを受け、世界半導体市場統計(WSTS)は11月28日、23年の世界の半導体市場規模が前年比9・4%減少するとの予測を発表。24年には市場の回復が見込まれますが、さらなる米国の貿易制限措置は阻害要因になりかねません。

中国頼みの実情

 電子情報技術産業協会(JEITA)の12月21日発表の予測によれば、23年の日系企業の半導体生産額は前年比3%減少します。
 財務省が20日に発表した11月の貿易統計速報では、半導体製造装置の輸出総額は前年同月比1%減になり、8カ月連続で減少しました。
 先端半導体製造装置で世界大手の東京エレクトロンの河合利樹社長・最高経営責任者は11月10日の決算報告で、中国での非先端半導体用の製造装置販売が同社の業績全体を「カバーしている」と指摘。同社の売上高は中国向けが全体の42・8%を占めています。
 日本の半導体企業は世界最大の市場規模を持つ中国に頼らざるを得ないのが実情です。
 米国追随の日本政府の政策では、国内の産業発展をゆがめるだけです。(おわり)

ポイント

(1)岸田文雄首相は軍事利用の危険もある特定半導体企業に青天井で予算を配分
(2)米国は広く産業に打撃を与える一般半導体の対中輸出規制に向けて調査開始
(3)日本企業の半導体製造装置の輸出総額は減少傾向。米追随の政策転換すべき

 日本政府の税金投入のセンスの無さは歴史である。税金投入して破綻した企業も多いです。

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