巡る季節　巡らぬ衣服

急に寒くなり、着る物がない。
あるのだが、ない。

昨シーズン着倒したシャツは既にくたびれていて、次のシーズンが始まるときに買い直せばいいやと思っていた。
毎年季節が変わる度に同じことをやらかすのだが、次が来る前に買った試しはない。
真夏に秋の物を見ても、色も素材もピンとこず、暑そうで買う気にならない。
冬に春のものを見ても、淡い色がちょっと気恥ずかしく、春物が寒そうに見えて手に取らない。
そうやって先延ばしにした結果、焦って買うことになる。

成長期の子どもたちはどれもサイズアウトしてしまい、総取っ替えが待っていた。
お母さんというのは子どもを風邪ひかせないことへの執念はものすごいため、必死の形相で買いにでかける。
自分の衣類など二の次で、まずは子どもに「寒い」と言わせないことを使命とさえ思っている（私だけか？）。
必要なものだからと次々に買っていく様は、一見気持ちがいいが、内心次のカードの引き落としに怯えている。

昨日今日と奔走という言葉がぴったりなほど、街を歩き回った。
子どもの衣類を求めて、好みも考慮しつつ探していく。
もちろんネットでも買った物もあるのだが、自宅用にプチプラでほしいものは足を運ぶほかない。

服に意識がいっているからか、道行く人が着ているものに気がいきがちだ。
面白いのは、去年のものと、今年のものとが見分けがつくこと。
見て違和感がないものも、きっと去年のを大切に着て大切にしまっておいたものなのだろう。
明らかによれていたり、毛玉ができていたりする服を着ている人を見かけることも多く、突然の季節の移り変わりに対応できなかったグループだなと思う。
私もこのグループかと焦りつつ、ここまでではないと、同じ穴の狢さながら言い訳してしまう。

気持ちがいいのは新しい服を着ている人たちだ。
服はぱりっとしていて、折り目がまだはっきりとしていて、色も鮮やかに生き生きとして見える。
なにより着ている人の表情が明るく、楽しそうに見えるのが印象的だ。
必ず季節は巡るわけだから、先見というほどではないのかもしれないが、そうやって先を見通し支度ができる能力は素晴らしいと思う。

あぁ、私もあちらのグループへ行きたい。
次の季節こそはと、これで何回目かの誓いを立てる。