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寒い春の日に

ずっと暖かい日が続いていたが昨日の雨で気温が下がり、
今日の予想気温は、最高最低ともに
ここ数日に比べて少し低い数字になっていた。

それでも日中は15度近くまで上がる予報なので、
薄手のジャケットにするか、コートにするかで
出掛ける時に大いに迷った。
自分が極度の寒がりであることと、
まだ3月半ばであることからコートを選んで家を出た。

マンションの外へ出れば、冷たい空気が広がっている。
昨日の午前中に出掛けた時とは全く異なる体感に少し驚いた。
——このコートだとやっぱり首が寒いな
そう思いながら駅への道を歩き始めたのだが、
目に入る人の多くが冬の装いであることに気がつく。
駅のホームでも、ターミナル駅での乗り換え時にも
目的地までの道、建物の中に入った時にも
そうした格好の人たちが多かった。

また自分だけ季節が異なるのではと
不安な気持ちでいたのだが、
そんなもの杞憂であったとほっとする。
逆にまばらな春の装いの人たちは、少し寒々しく目に映る。

すれ違う冬の人たちからは、
「本来3月半ばはこんなもん」
という声が聞こえてくるかのようだ。
みんなコートを仕舞わずにいたんだなぁ。

手が冷たくてコートのポケットに手を突っ込んで歩く。
同じように歩いている人が多く、
また、ポケットに入れない人を見てみれば、
殆どの人がぐっと拳を握って寒さをしのいでいた。
なんの意地なのかはわからないが、
手袋をしている人は見掛けることはなかった。

今日は、全くの見知らぬ人たちに、
ただすれ違うだけの間柄の人たちに、
不思議な一体感を感じた日だった。
――寒いときは寒い
気持ちを共有できる喜びを、こんなところで実感するとは。

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