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例年通り

コロナ禍で取りづらくなっていた人間ドックの予約が取れたのは3月の日付だった。
真冬の2月に行くよりはまだましかなと気楽に構えてその日を待った。

例年通り様々な各部屋を自分で周りながら、スタンプラリーのように検査を受けていく。
変人扱いされるのだが、私は人間ドックが大好きで一つのイベントだと思っている。
特に世のみなさま方が嫌がるバリウム検査は、斜めになった台の上で自力で回転させられるなど、さながらアトラクションのようで楽しんで参加している。
楽しく体を診てもらい、何もありませんでしたという結果をもらうのも、例年通りのはずだった。

確かに今年の胸の超音波検査ではやけに時間がかかっていた。
一昨年の超音波検査で判定AからBに落ち、不安を抱えていたのは知っている。
昨年のマンモグラフィ検査では判定Aに復活していたことから問題はないと安心していたし、今年の超音波検査中の違和感も大丈夫と高を括っていた。
それよりも私は薄暗い部屋の中、ベッドの上で横たわり、この眠気をどうするかの方が重要だった。
検査の機械を操作するカチカチという無機質な音は心地よく、寝不足だった私は不安など微塵も感じずに欲望のままに目を閉じていた。

4月に入って季節が変わり、私宛に書留で人間ドックの結果が届いた。
郵便局員さんから受け取った時に、あれ、と思った。
いつものぺらぺら感がなく、少し厚い。
病院へいけ、と封筒越しに伝わってきていた。

開けてみれば超音波検査の判定はD。
紹介状も入っていた。
不安はあっても結局大丈夫という図式はその時既に脳内にできあがっていて、安心のために行っておくかと病院の予約を取ったのはその数日後のことだった。

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